みつむら web magazine

一本の鉛筆の向こうに(小学校4年)

教科書 time travel

2018年10月5日 更新

「昔、たしかに教科書で読んだ気がする。ストーリーは覚えているんだけど題名を思い出せません」

過去の教科書掲載作品から、特にお問い合わせが多い作品を取り上げて、あらすじや編集にまつわるエピソードをご紹介します。

画像、一本の鉛筆の向こうに

誰の周りにもある一本の鉛筆。それが作られ、使う人のもとに届くまでには、多くの仕事と、大勢の人たちがいる。鉛筆の芯の原料となる黒鉛を掘り出すスリランカの鉱夫。材料のヒノキを切り出すアメリカの木こり。切り出された丸太を製材所に運搬するトラック運転手。鉛筆に仕上げるための工場で働く日本の工員。
鉛筆という「物」が、どんな材料でどう作られているかを知るだけでなく、そこに関わるさまざまな「人」の仕事や日常の生活を紹介した作品。

【作者・筆者】
谷川俊太郎 作/坂井信彦・穂積 保 写真/堀内誠一 絵

【掲載巻/版】
4年下巻/平成4年度版・平成8年度版・平成12年度版

編集にまつわるエピソード

平成4年度版の編集方針の一つが「読書」の拡充でした。いわゆる名作の紹介にとどまらず、「こんなことが書いてある本もあるんだ」と子どもたちが目を輝かせてくれる作品を取り上げたい。そんな思いから生まれた教材の一つです。

月刊科学絵本「たくさんのふしぎ」(福音館書店)の創刊号にも掲載されたこの作品は、それまでの説明文教材の範疇にはなかったもので、「鉛筆は、こういう原料と工程でできる」と説明するだけではなく、そのために働く「人の仕事や日常、家族の生活まで描いた」ものでした。
教科書に載ったのはもう20年も前。ああだこうだと夜中まで議論した当時の編集部員の中には、会社を辞めた人間も亡くなった人間もいます。

そんなことを思いながら、ある年の我が社の入社試験の面接で「子どものころの教科書で覚えている作品はある?」と質問したところ、「ポディマハッタヤさんが出てくる話です」と答えた学生がいました。「一本の鉛筆の向こうに」です。あんな長い名前がよくすらすらと出てくるなと感心していると、「ポディマハッタヤさんは、スリランカのボガラ鉱山で働いていて、食事は朝も夜もカレーでしたよね」と涼しい顔で答えます。

いやあ、子どもってすごい。教科書ってすごいんだな。心からそう思ったものです。
ちなみに、入社試験を受けたその学生は、今、編集部にいて、新しい時代の子どもたちに向けた作品を一生懸命探す仕事に就いています。

文: 編集部

『光村ライブラリー 小学校編 第11巻』

過去の教科書掲載作品を収録したアンソロジー。
「一本の鉛筆の向こうに」をお読みいただけます。

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