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Q16. 社会学の本の整理のしかたを教えてください。(その3)

読書Q&A 学校図書館(理論編)

2015年1月1日 更新

赤木かん子 児童文学評論家

どうすれば子どもたちが集まる図書館になるのでしょう。本のそろえ方や整理のしかたなど、学校図書館の作り方や運営方法に関する悩みにお答えします。

A(回答)

さてと、この「社会学」の棚の話は、前回もわかりにくかったと思いますが、今回はさらにわかりにくいです。だから、理屈はあきらめて、要するに「ここにはこのジャンルがあればいいや」というように思ってくださってもいいです。ここの話を理解するには"図書館学の基礎知識"が必要なのです。数学だってなんだって「説明さえされればなんでもわかる」というものでもないでしょう。「これは説明できるが、これは無理!」ということだってあるんですよ。というわけで、では…。

図書館の分類はどっちかというと、「社会を使う側」からではなく、「社会をつくる側」の視点からつくられています。子どもたちはまだ社会を使う側にしかいられないし、大人でもその業界にいない限り、ふつうはつくる側ではなく、使う側にいるわけです。ですから、たとえばペット、ね。可愛い犬、猫、金魚の飼い方、なんて本がどこにあるかというと、これが実は「産業」にあります。なぜかというと、可愛がる側からではなく、ペットを売ったり繁殖させたりして、要するに「商売」にしている側から見ているからです。それと同じように、社会学の後半はほぼ、日本のくらしと社会福祉…、つまり老人問題、女性問題、というように構築されていますが、子どもたちにとっては、老人問題は「お年寄りってこういう人ですよ」だし、社会福祉にいたってはあちこちに散らばりすぎていて収集がつきません。NDCの1は"心理学、論理学、神学、哲学"ですが、子どもの本の場合、一冊の本を1と3、どっちに入れてもいいんです。というより、同じ内容の本なのに二つに分裂しちゃうんです。

今までがんばって学校図書館をつくってきた、司書や先生方を何人も見てきましたが、全員ここのところでは途方にくれていました。というより、逆ですね。ここで途方にくれているなら、仕事ができる人々なんですよ。私もここで途方にくれたので、他の人に「どうしてる?」と聞きにいったのですが、答えは「どうにもならないのよ」のオンパレードでした。

そういうわけで、今の勉強には何が必要か、何が強調されているか、を考えて、ハートマークの数による分類を思いついたときには「やったー!!!」でした。「これでやっと学校図書館ができる!」になったのです。その、ハートマークの分類、というのは、ハートマークひとつ♥は「こころの問題」、二つは「ボランティア」、三つは「病気、ハンディ、医者、看護師」です。

そのうち「こころの問題」は本があふれてしまったので、そのなかから独立させられるものはないかを考えて「老人問題」「死のテーマ」はまとめて別のジャンルをつくりました。もうひとつ、いじめの本をどうしようか、でも「いじめ」ってジャンルはつくりたくないなあ、と思っていたところへ『とにかくさけんでにげるんだ』(岩崎書店)が出版されたので「これこれ!」と思い「危機管理」のジャンルをつくりました。ここは「性的虐待」「肉体的虐待」「心理的虐待」の棚ですので、いじめは全部ここに入ります。つまり「別置」の考え方を使うのです。

赤木かん子

児童文学評論家。長野県松本市生まれ。1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介、書評などで活躍している。主な著書に『読書力アップ!学校図書館のつくり方』(光村図書)などがある。

赤木かん子公式ウェブサイト

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