みつむら web magazine

Q18. やってはいけない分類を教えてください。(その2)

読書Q&A 学校図書館(理論編)

2015年1月1日 更新

赤木かん子 児童文学評論家

どうすれば子どもたちが集まる図書館になるのでしょう。本のそろえ方や整理のしかたなど、学校図書館の作り方や運営方法に関する悩みにお答えします。

A(回答)

今回は「学校図書館でやってはいけない分類」の追加です!

「生き物」を「すむ場所」で分類するのもやってはいけません。なぜかというと、生き物によっては海水でも淡水でも生きているし、決まった場所・・・・・・たとえば「水の中の生き物」とか「川岸に住む生き物」みたいな分け方は、そこにいる生き物の数が膨大すぎて、分類したことにはならないので、すぐに行き詰まってしまうのです。もし行き詰まらないのなら、それはあまりにも本が少なすぎるか、やっている人に、「これは変だ」と感じるだけのブックセンスがないかのどちらかです。センスがなければ、みっともない服を着ていても、みっともないと思いません。

デザインの世界で一番センスがいいのは、他の人がやらない悪趣味ギリギリの線で止めることで、そういったデザインを考える人が次の世代のデザイナーになっていくわけですが、本の世界も、センスがなければ、「この並べ方は変だ」「みっともない」「本質的じゃない」「わけがわからない」「これではまずい」という思考にはならないのです。

私も、どうしても「生き物」に2段の棚しか使えない学校があった時は「変温動物」と「恒温動物」に分けましたが、それぞれの本のシールはそのまま、カエルはカエルを貼りました。鳥は鳥、サルはサルですよ。もしどうしても、「昆虫」は「昆虫」でしか分けたくない(でもそんなのは司書じゃないけどね)のならば、蝶々とか、カブトムシのシールではなく、昆虫図鑑のシールをはってください。理由は・・・・・・言わなくても、わかるよね?

こういうことを、大人に、特に分類に興味がない女性に実行してもらうのはホネですが、これを「めんどうくさい」と言っていたら、それは職務怠慢ですよ?子どもたちの、特に理系の子たちと図書館にとっては、「ちゃんと分類がなされているかどうか」は本当に死活問題なんです。お願いです。「生き物」を、「すむ場所」では分けないでください。その分類は分類体系を壊すんです。

あと、ネット上から適当にマークを探してきて分類シールに使うのは、安くていいと思いがちですが(タダだからね)、なんの意味もありません。やってみるとわかりますが、そういうマーク、イラストって、「私を見ないで」というカンジで、まったく人を惹きつけないんです。「私を見て!私は歴史の本だよ!」というふうにはならない。やるだけ無駄です。

だから、手間暇かけてお金をかけて(まだもとはとれてません)、イラスト分類シールを作ったんです。あれは、シール代だけではなく、私の「分類体系の考え方」(十進分類をちょこっと手直ししただけだけどね)そのものの代金が入っているんです。日本人はそういうかたちのないものに、お金を払うのがとても下手です。でも、本来なら「考え方」そのものに、著作権があるんです。「学校で使う分には、著作権を免除する」という粋なはからいが、なんか、間違った方向で理解されているような気がするのは、ちょっと悲しいです。

赤木かん子

児童文学評論家。長野県松本市生まれ。1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介、書評などで活躍している。主な著書に『読書力アップ!学校図書館のつくり方』(光村図書)などがある。

赤木かん子公式ウェブサイト

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