シーズン・インタビュー

2010年夏 松谷みよ子

『語り継いでいきたい言葉・心』 松谷みよ子

第3回 「子どもたちに伝えていきたいこと」

ご自宅の隣に「本と人形の家」を作られて、子どもたちに開放されていますね。

第4以外の毎週土曜日に開館し、地域の子どもたちが遊びに来ます。約6,500冊の蔵書があって、貸し出しもやっています。ここは人形劇もできるようになっているんですよ。私もできるだけ一緒にいて、子どもたちと話をしています。
 また、語りの上手な人が、お話をしたり、みんなで手遊びをしたり、紙芝居や夕涼み会もやります。

 開館してからもう40年ほど。当時は文庫活動というのが全国で盛り上がっていまして、坪田譲治先生の「びわのみ文庫」(※4)をお手本にしてわたしも作ったんです。今では、ここを巣立った子が、赤ちゃんを抱いてまたやってくることもありますよ。

松谷みよ子

自宅の隣にある「本と人形の家」
毎週土曜に近所の子どもたちが集まってくる

そこで、ずっと子どもたちの姿を見つめ続けてこられて、なにかお気づきになったことはありますか。

ひと言で言うのは難しいけれど、子どものころの絵本や童話との出会いや、お話を聞いたという体験は、大きくなっても思い出の中に残るはずです。
 40年前だって、今だって変わりませんよ。子どもたちは本質的には本が好きなんです。だから、こういう文庫や、いろいろな童話、民話、語りを通して、温かくて豊かな言葉を子どもたちに伝えていきたいですね。

松谷みよ子

「本と人形の家」では紙芝居などいろいろな催しも開かれる(左後方が松谷さん)

私たちの先祖は、言葉をもったときからお話を作り、語り続け、それが今、民話という形で残っているんです。だから、民話の採訪をしていると、たくさんの先祖との出会いを感じます。
 民話をこれから語り継いでいくのもわたしたちの一人ひとりだし、新しい民話をつむぎ出していくのもわたしたち一人ひとり。そういう意味で、子どもたちに、たくさんのお話と出会わせてやり、豊かな物語を創造する力をつけてあげたいと思います。

最後に、松谷さんにとっての民話の魅力を一言で。

民話の世界は山脈のように大きく、懐が深いのです。壮大なお話もありますが、野に咲く一輪の花のように、小さくても凛として存在を示しているものもあります。それがわたしをひきつけてやまない民話の魅力でしょうか。

     

※4 びわのみ文庫 1961年に、坪田譲治が東京都豊島区の自宅の一部を開放して作った児童図書館。

松谷みよ子[まつたに・みよこ]

松谷みよ子

1926年、東京生まれ。童話作家。

『龍の子太郎』(講談社)で国際アンデルセン賞優良賞受賞。『ちいさいモモちゃん』(講談社)で野間児童文芸賞、『あの世からの火』(偕成社)で小学館文学賞、『私のアンネ=フランク』(偕成社)で日本児童文学者協会賞。
  民話に関する著作に『現代民話考(全12巻)』(ちくま文庫)、『現代の民話』(中公新書)、『民話の世界』(PHP)など多数。

ホームページ「松谷みよ子の部屋

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