『無限の可能性を広げる』 石井琢朗
このコーナーでは、さまざまな分野で活躍されている方をゲストに迎え、3回にわたってお話をうかがいます。
今回は、日本プロ野球界を代表する内野手であり、チャリティ活動や教育支援活動も積極的に行っている石井琢朗選手(広島東洋カープ)をゲストに迎え、夢の実現や教育をテーマに、子どもたちとその周りの人々への思いをお聞きしました。
第2回 「子どもたちのもっている可能性を引き出したい」
プロ入りしてある程度成績を残せるようになったので、地元の栃木県佐野市に対して恩返しをしたくて、何かできることはないかなとずっと考えていました。
それで、地元の方々や周りのいろいろな方に相談したら、協力していただけることになって、今の形になったんです。

子どもたちのもっている可能性を引き出してあげたい。きっかけや影響を与えたい。それがいちばんです。TAAで体を動かすことによって、自分の好きなものや、やりたいものを見つけて、それを伸ばしていくことができればいいなと思います。それが野球じゃなくても、走るのが速ければ走ることでもいいし、蹴るのが得意だったらサッカーでも構わないんです。
あとは、躾という部分も重視しています。返事や挨拶であったり、友達や親、周りに対する感謝の気持ちであったり、周りの友達を大切にする、友達と一緒になにごともできる協調性などを、養っていければと思います。
僕ももう40歳を超えたのですが、自分がやってきたことを振り返るたびに、いろんな人たちの支えがあってここまで来られたんだな、自分ひとりの力じゃないんだなって思います。そういう意味を込めて、感謝という言葉を使わせてもらっています。TAAには「5つの心」というものがあります。元気よくあいさつして返事をする心、自分から進んでチャレンジする心、友達を大切にして友達を思いやる心、人の話を聞いて理解しようとする心、「ありがとう」という感謝をする心、の5つです。その中でも「感謝の心」は大事にしています。子どもたちには、常に何かし終わったときに「ありがとうございました」「おかげさまで」という謙虚な心をもってほしいと思います。

なるべく、子どもたちと同じ目線で接してあげることを心がけていますね。
それから、完璧にできる子がいれば、できない子もいる。同学年でも能力の違いがすごくあるんです。そこで、「なんでできないんだ」と言うのではなくて、できない子にはマンツーマンでスタッフが教える工夫をしています。
いちばん大切なのは競争心なんです。競わせることはすごく大切です。例えば、かけっこをやらせると、速い子、遅い子がいる。遅い子は速い子に追いつくように一生懸命走って、速い子は速い子で負けないようにより一層速く走る。
個人単位で教えていると、教えている側には成長の度合いがわかっても、教えられている側は「自分がどれだけ成長しているんだろう」という伸びしろがわかりにくい。だから、みんなと一緒にやることで、優越感や劣等感が芽生えて、それをバネに頑張ろうと思うことが大事なんです。その頑張る過程の手助けをしてあげるのが、僕らの仕事ですね。
子どもたちは着実に成長していますね。じっとしていられなかった子どもが、ちゃんと人の話を動かないで聞けるようになったり、返事や挨拶をしっかりできているようになったり。でも、僕はシーズン中は行けないので、この成果は毎週子どもたちを指導してくれるスタッフのおかげです。スポーツの技術的なことは、あまり求めていません。何がいちばん大切かと言ったら、やっぱり楽しむこと。子どもたちが楽しくできる環境がいちばんです。楽しければ、うまくなろうという気持ちも芽生えますし、成長が早いんです。
石井琢朗[いしい・たくろう]

1970年栃木県生まれ。プロ野球選手。足利工高では、エースとして甲子園に出場。88年ドラフト外で投手として横浜大洋ホエールズ(現横浜ベイスターズ)に入団。1年目に初勝利を挙げる。4年目から野手に転向し、98年にはチームの38年ぶり日本一に貢献。ゴールデングラブ賞4回、盗塁王4回、ベストナイン5回、最多安打2回、オールスター出場6回、日本シリーズ優秀選手賞1回など、球界を代表する内野手として活躍。2006年には史上34人目の2000本安打を達成し、名球会入りを果たした。08年オフに広島東洋カープへ移籍。遊撃手としての最多出場記録保持者。
現役選手を続けながら、チャリティ活動や教育支援活動も積極的に行っている。著書に『疾走!琢朗主義』(ベースボールマガジン社)がある。
◆石井琢朗選手のオフィシャルブログ「超琢朗主義」











