富岡栄先生

どうなる?どうする?道徳の授業づくり

道徳が「特別の教科」となることで,授業づくりはどうなるの?
道徳を学ぶ理由から,大切にしたいポイントまで,全4回でご紹介します。

第1回どうなる?どうする?評価について回答者:富岡栄先生(高崎健康福祉大学特任教授)


教員——道徳科における評価の意義とはどのようなものなのでしょうか?

富岡富岡評価の意義は大きく分けて二つあります。

一つは,子ども自身が自分の成長を確認して,今後の意欲につなげていくためのものです。

もう一つは,教師にとって自分の授業や指導計画に役立てるためのものです。


教員——評価する際には,どのようなことに留意すればよいのでしょうか?

富岡富岡大きく三つの留意点があります。

一つは,記述式であることです。道徳科で養うべき道徳性は,人格の基盤を成すものです。ですから12345のような数値による評定は,基本的になじみません。そうすると当然,記述式は妥当な評価方法であると思います。

二つ目は,大くくりなまとまりを踏まえた評価をするということです。道徳の一時間の授業では,道徳性の育成について評価するのは難しいので,例えば1学期の中でなど,ある程度のスパンでの見取りの中で評価していくべきではないでしょうか。

三つ目は,個人内評価とすることです。一般的に各教科では,到達度目標に対しての評価をします。例えば算数科では,「九九のかけ算ができるようにする」という目標があれば,それを目ざして教師は指導をし,それができることに対して評価を行っていくわけです。それに対して道徳科の場合は,道徳性を養うという「方向目標」です。それは教科内で完結するのではなく,人生の中で自分磨きをしていく中で道徳性を養っていかなければなりません。そういう意味で,個人内評価が妥当な評価方法といえるでしょう。


教員——評価する際,生徒のどんなところを見取っていけばよいのでしょうか?

富岡富岡留意点で二番目に申し上げた「大くくりなまとまりの中で評価をすること」と関係があります。つまり,一時間一時間の内容項目に沿って,道徳的価値について評価することではありません。そうすると見取る視点のよりどころとなるのは,道徳科の目標ということになります。

目標の中には,「多面的・多角的に考える」という文言があります。そうした見方をしたか,考え方が広がったかという視点で見取っていく方法があります。また,「自分ごととして捉える」ことができているかという視点で見取っていくことも考えられます。


教員——評価の記述のしかたについて,教えてください

富岡富岡これは先生方がたいへん気にされている事柄だろうと思いますので,具体的に指導要録と通知表の記述について説明します。

指導要録の記述は,留意点で申し上げた「大くくりなまとまりを踏まえた評価」という視点から考えると,多面的・多角的に考えられたか,自分ごととして考えられたか,という見方で書いていくことになります。

指導要録は公簿ですので,作成義務があります。それに対して通知表は,公簿ではなく(形式や内容は校長の裁量に委ねられている),各家庭への連絡簿としての役割をもっています。そこに指導要録と同様に「大くくりなまとまりを踏まえた評価」を書いても,子どもの実際の学習状況が保護者に伝わりにくいという現実があります。ですから,一時間一時間の道徳科の授業の中での子どもたちの成長の様子や学習状況を記述していくことも考えられるのではないでしょうか。

例えば,「手品師」という教材を例に考えてみましょう。

ある子どもにとって,「手品師」が非常に印象的でした。その子が,感想の中に「主人公の気持ちがたいへんよくわかる。私も大劇場に行くべきか,子どものところに行くべきか悩みに悩んだ。その結果,やはり自分は誠実に生きていたいので,自分は子どものところに行く」と書いたとしましょう。通知表には,そのことを素材として書いて,親御さんに知らせることも一つの方法ではないかと考えます。


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