杉中康平先生

どうなる?どうする?道徳の授業づくり

道徳が「特別の教科」となることで,授業づくりはどうなるの?
道徳を学ぶ理由から,大切にしたいポイントまで,全4回でご紹介します。

第2回どうなる?どうする?「多面的・多角的」に考える授業回答者:杉中康平(四天王寺大学准教授)


教員——道徳科の学習で,「多面的・多角的」に考えることがどうして大切なのでしょうか?

杉中杉中ますます多様化が進む現代社会の中で,子どもたちがよりよく生きていくためには,人としての生き方や在り方について,多様な価値観の存在を前提にしながら,他者と対話したり,協働したりすることが求められています。

道徳科の学習においては,道徳的価値を自己との関わりで捉えるとともに,多面的・多角的に考えることによって,価値の理解だけではなく,自己理解や人間理解,他者理解も含め,また広い視野からさまざまな視点で人としての生き方や在り方について考えを深めることが可能になるのです。

そして,そのことによって,道徳的価値を自分なりに発展させていくことへの思いや,課題意識も培われるのです。

したがって,道徳科の学習において,多面的・多角的に考えることは,「主体的・対話的で深い学び」という学びの本質とも関わる大切なことであるといえるのです。


教員——道徳科の授業において,「多面的・多角的」に考えさせるためには,具体的にどうすればいいでしょうか?

杉中杉中私は,対話を大切にすべきであると考えています。

授業中に,子どもたちが,多面的・多角的な思考をするためには,以下の四つの対話が必要です。
  1. 教材との対話
  2. 授業者である先生との対話
  3. 子どもどうしの対話
  4. 自分自身との対話

1.教材との対話

教材との対話とは,教材を国語科の読み取りのように理解させるのではなく,時には役割演技なども取り入れながら,子どもを主人公にしっかり自我関与させ,主人公との対話を通して生き方を学ぶことです。具体的な物語を通して学ぶことで,道徳的価値を観念的に理解するのではなく,自分自身の体験などと関連付けて考えさせることで,多面的・多角的に価値を捉えることが可能となります。

2.授業者である先生との対話

道徳科においては,よく,「生き方に正解はない」と言われますが,正確には,「生き方に絶対的な正解があるわけではない」ということです。つまり,子どもの数だけ正解があるという姿勢で,授業者である先生が,子どもたちのどんな答えにも真摯に向き合い,受け止め,認めていくことが求められます。そのことを通して,子どもたちがしっかりと価値に向き合い,学んでいくのです。

その際には,教師はうなずくだけでなく,子どもたちの答えの不十分さや曖昧さに対して,しっかりと,「どうして?」「それはどういうこと?」などの追発問をして,深めるという姿勢が必要になってきます。

3.子どもどうしの対話/4.自分自身との対話

この二つは,相互に関連しているといえます。子どもたちは,さまざまな意見や考えを発表しますが,その際に,学級にそれぞれの考えや思いを受け止めるという受容的な風土がなければなりません。そして,いっぽうで,子どもたちは友達の意見を聞きながら,自分自身との対話も並行して進めていくことになります。つまり,子どもたちどうしがフランクに本音を交流し合う中で,さまざまな考えを受け止め,そして自分自身の考えを深めていく。また,自分自身がしっかりと意見や思いを発表することで,自分自身の思いや考えにも気づいていくという対話です。

以上の四つのように,さまざまな対話を大切にするなかで,子どもたちは多面的・多角的に学び,そして道徳的価値の自覚,つまり人間としての生き方についての考えを深めるという学習に迫っていけるのです。

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