田沼茂紀先生

どうなる?どうする?道徳の授業づくり

道徳が「特別の教科」となることで,授業づくりはどうなるの?
道徳を学ぶ理由から,大切にしたいポイントまで,全4回でご紹介します。

第3回どうなる?どうする?1年間の見通し
~カリキュラム・マネジメントの重要性~回答者:田沼茂紀
(國學院大學人間開発学部長・教授)


教員——「特別の教科 道徳」になって,年間指導計画のあり方はどう変わるのでしょうか?

田沼田沼従来の「道徳の時間」では,道徳資料を使って道徳性を育んでいましたが,「特別の教科 道徳」になると,道徳教材を使って道徳性を育みつつ,どういう道徳的な資質・能力を形成していくのかということが求められてきます。そこが大きく変わったところです。つまり,道徳教材の位置づけが変わったのです。

そうなると当然,年間指導計画も変わってきます。今まで年間指導計画は,さまざまな道徳資料を集めて羅列し,それを季節感や学校行事などと絡み合わせながら35時間を位置づけていました。しかし、これからは1年間の道徳科授業の中でどういう力をつけていくのか,どういう資質・能力を形成していくのかということを考えるうえで,年間を見通した指導の在り方が問われてきます。1学期ではどういう学びを構築するのか,1,2学期を踏まえ3学期はどういうまとめかたをしていくとよいのかなど,意図的,計画的なカリキュラムの組み方が大切になってきます。


教員——年間指導計画はどのように作成すればよいのでしょうか?

田沼田沼

■年間指導計画の考え方

「特別の」とはいっても,道徳が教科になったので,運営していくうえで1年間の学習の成果をエビデンス(証拠・根拠)として検証できるような指導計画に変えていかなければなりません。「今日はこういう道徳授業をやりましょう」という単発的な発想では済まなくなってきます。道徳科の授業を毎時間積み重ねていって,各学期の中で道徳的資質・能力を形成しつつ道徳性を高めていきながら,道徳教育全体計画の中の全学年の資質・能力形成の目標が達成されるような組み方をしていかなければ教科カリキュラムとはいえません。

■大きなスパンで考える

今まで道徳の年間指導計画では,道徳的な学びの範囲(scope)と系統性・体系性(sequence)があまり考えられていませんでした。例えば,「うちの学校は思いやりの心が足りないから,少しそこを重点的にやろうか」「運動会が近いので,主体的に活動できるような学びをもってこようか」など,極めて短期のスパンで考えることが多かったのです。しかし,教科化されると,学期や年間という大きなスパンの中で,道徳的な学びができるようにしていくことが必要となってくるのです。

そう考えると,1年間を大きな単元として捉えることができます。35時間を大単元として考えることが大切なのです。それを受けて,各学期で具体的に連続した学びを考えると,いわゆる「パッケージ型ユニット」とよばれる小単元を設定する考え方も生まれます。

■パッケージ型ユニットとは

いじめや環境,命,情報モラルなどに代表される現代的な課題について,1時間で指導しようとすると限度があります。例えば,いじめの問題では,今までは公平・公正,社会正義/友情・信頼/生命の尊さなどの中の一つの視点だけから取り上げて1時間を構成していました。これに対して,小単元という考え方では,いじめの問題という一つの学習テーマを3時間ぐらいで扱い,公平・公正,社会正義/友情・信頼/生命の尊さのそれぞれの視点での教材を使って,現代的な課題を多面的・多角的に捉えていくことが可能になります。

現代的な課題を多面的・多角的に捉えることによって,道徳的価値の理解や道徳的行為を実践するためのスキル,道徳的な思考力・判断力・表現力などを育むことができます。

教員——カリキュラム・マネジメントということが言われますが、なぜ大切なのでしょうか?

田沼田沼

■カリキュラム・マネジメントの必要性

道徳が教科として扱われることになると,学び評価が入ってきます。従来の道徳の時間のように,一主題一単位時間という単発型だと学びが見取れません。子どもたちは道徳的な学びをしていますが,それがなかなかパフォーマンスとして表れてこないのです。やはりある程度,小単元化や,一学期間での連続した学びで捉えないと道徳的な学びは読み取れません。そのために,カリキュラム・マネジメントが必要になってきます。

■カリキュラム・マネジメントの意義

例えば1学期間の授業の展開で,4月に取り組んだ授業実践を振り返ると,当然5月の指導計画も変わってくるはずです。年間指導計画の大きな流れは変わりませんが,その中で教材や指導法が変わっていくことがカリキュラムを充実させることになります。

カリキュラム・マネジメントの意義の一つは,指導と評価を繰り返しながら改善・充実することです。そうしないと,子どもの肯定的な学び評価としての授業評価はできません。

カリキュラム・マネジメントを意識することで,単純に年間で全指導項目を取り扱うという指導計画の従前の形から,子どもの実質的な道徳的学びを創り出すという年間指導計画に変わってくるのではないでしょうか。

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