道徳科の充実を支える学級づくり

「考え,議論する」授業の基盤となる「学級づくり」について,教師の在り方や具体的な工夫をご紹介します。

解説:水登 伸子(みずと・のぶこ)

広島市立広島中等教育学校教諭。広島市中学校教育研究会道徳部会部長を10年以上にわたって務めた。
35年にわたる教師生活の経験から,明るく温かい学級づくりや,それに基づく道徳の授業づくりについて研究している。著書に,『中学校「特別の教科 道徳」の授業づくり 集中講義』『学級づくりがうまくいく!中学校「お題日記&学級通信」』(共に明治図書)などがある。

第1回なぜ学級づくりが大切なのか


道徳の教科化にあたり,「考え,議論する」がキーワードになっています。「今まで『考え』はやってきたけれど『議論する』はちょっと・・・」と思われる先生方も多いのではないでしょうか。国語の授業で「話し合いのしかた」は学習しますが,だからといって生徒がちゃんと話し合えるようになるわけではありません。(私も国語科です。すみません。)以前説明文の授業をやっているとき,数学の先生に「それをやったら数学の文章問題もきちんと読めるようになるの?」と聞かれて言葉につまったことがあります。現実はそううまくはいかないんだなあ。

というのも,人は自分に何かせっぱつまったものがなければ,あるいは「このメンバーで話し合うと,きっとおもしろいぞ」と思わなければ,なかなか話し合う気にはならないからです。「話す」という行為には,この「~する気になる」が大いに影響を与えます。何回か議論するうちに「話し合うと今までの自分とは別の視点を発見できる」ということに気づくかもしれませんが,その段階に到達するのは大人でも難しいかも。たとえば6人くらいの飲み会なのに,気づくと二人きりで話し込んでいる人っていますよね。その日は,集まった6人で話すことに意義や楽しさがあるのに!

最近の研修会では,研究協議の際に,小グループで話し合って発表するという活動がよく取り入れられています。私,これ,得意なんですよ。全く知らないメンバーでも話し合いの口火を切ったり,適当にツッコミを入れて笑いをとったり。でも,自分が講師かなんかで前にいて全部の様子を見ていると,「むすっ」「しーん」みたいなグループが必ずあるのです。まずその表情をなんとかして!

問題意識があるはずの教員の集まりでさえそうなのに,生徒にいきなり心を開いて話し合えっていうのが無理。しかも道徳なんて自分の心の奥の方に関連することを「このメンバーと話す気にならない」と思ったら,そりゃあ話し合いも盛り上がらないですよね。「でも教員の研修会は,知らない人相手だけど,クラスの生徒どうしはよく知っているのに?」と思った先生は「本当にうちのクラスの生徒は,お互いのことをよく知っているのか?」と考えてみましょう。「よく知っているのは一部の友人間だけで,1年が終わってもろくに話したこともない子がいる」という実態はないですか? スター選手がすべての行事で活躍するだけで,自分や他人の存在意義を感じられない生徒が結構いたりしませんか?

自分の心のうちを,このメンバーなら話してもいいかな…と思える環境(=クラス)を作っていくのが,まず担任の仕事。次回はそのために教師が心掛けたいことについてお話します。