道徳科の充実を支える学級づくり

「考え,議論する」授業の基盤となる「学級づくり」について,教師の在り方や具体的な工夫をご紹介します。

解説:水登 伸子(みずと・のぶこ)

広島市立広島中等教育学校教諭。広島市中学校教育研究会道徳部会部長を10年以上にわたって務めた。
35年にわたる教師生活の経験から,明るく温かい学級づくりや,それに基づく道徳の授業づくりについて研究している。著書に,『中学校「特別の教科 道徳」の授業づくり 集中講義』『学級づくりがうまくいく!中学校「お題日記&学級通信」』(共に明治図書)などがある。

第3回道徳の授業ができる学級づくりの具体的実践例


「素晴らしい学級」って,たぶん日本にいくつもあるのだと思いますが,ここでは「道徳の授業をする上で」ということで,「素直に自分の考えが言い合える場としての学級づくり」に焦点を当ててみたいと思います。

私が大切にしているのは,手書きの学級通信です。最初は「保護者に学校の様子を知ってもらおう」というだけの気持ちで始めました。マスコミは学校の荒れをことさら取り上げるけれど,うちのクラスの日常は笑いがいっぱいだということを伝えて安心してもらいたかったのです。

そのうち,生徒を一人ずつ紹介していくシリーズや,道徳の時間に書いた生徒の考えを載せ始めると,学級通信を生徒も保護者も楽しみにしてくれるようになりました。また,他学年の先生が「学級通信に載っていた○○君ってどの子?」と自分のクラスの生徒を気に掛けてくださるようになったし,夏休みの三者懇談のとき,保護者がえらくフレンドリーに接してくださる。というのも,4月からの毎週の学級通信で,担任がどんな人間で何を考えているのかがよく分かっているから。もちろん生徒も。

でも,担任の考えばかり載せている通信では,生徒がお互いを知ることにはなりません。どんどん生徒の考えていることを載せなければ。そのネタ元になるのが「お題日記」です。

私は,終学活で毎日「お題」を出して,文章を書かせます。次の日までに「お返事」を書いてまた終学活で返す。それだけですが,単純な日記ではなく「お題」があるのがポイント。「我が家の暑さ対策」「お弁当の楽しみ」などなど,「ほほー」「うぷぷ」「かわいい!」が満載です。それを学級通信に載せると「みんなこんなこと考えているのか」と思って,互いの距離が近づきます。

そしてときどきは,道徳の授業で書いたことを載せてみましょう。「うちの生徒はきれいごとばかり書いて」と言う先生がいるけれど,それは発問がきれいごとを書くように誘導してしまっているから。「え?」と思わず自分を振り返るような発問なら,キラッと光る言葉をすくいあげることが必ずできるはず。そうやって,楽しいことも真面目なこともみんなで共有していけば,クラスの雰囲気というか,「世論」ができあがります。このクラスでは,肩肘張ったり,意地悪したりするより,普通に話す方が楽だと分かればいいのです。人をけなして笑いをとるより,もっと楽しい笑いがあると分かればいいのです。「学級づくり」というと,リーダーを育てて,仕掛けをして・・・などと思いがちですが,私はそういうのが苦手なので,地道な活動がボディブローのように効いてくると信じています。