ここが知りたいQ&A

35年にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡栄先生が「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

質問7道徳で求められる「評価」って,どんなもの?

道徳の教科化で評価の方法や在り方が話題になっていますが,これまでの学習指導要領でも評価を行うことの必要性や意義については述べられていました。ただ,道徳が教科でなかったことや軽視されがちだったことなどから,評価はほとんど行われてこなかったという実態があります。教科化により,これまで有名無実であった評価が必須事項となりました。

なぜ評価を行うのか,基本的なことから考えましょう。教育における評価の意義は二つあります。一つは,児童生徒にとって,自分自身が道徳的成長を実感し,学習意欲の向上につなげるためのもの,もう一つは,教師にとって,指導計画や授業改善に役立てていくために行うものです。特に,道徳科の評価は,道徳性が人格に関わるものであることを考えるとき,児童生徒の道徳的なよさを認め,励まし,伸ばすためのものであることが望まれます。

教師は,評価というと1,2,3のような数字や,指導要録の「行動の記録」の欄に○を付ける評定を思いがちです。しかし,道徳科における評価は,これとは全く異なりますので,この考えを払拭する必要があります。以下に評価の具体的内容を述べていきます。

道徳科で評価する事柄や評価方法について

学習指導要領には評価する事柄として「学習状況」と「道徳性に係る成長の様子」が示されています。授業中での言動や記述文等からこれらについて評価していくことになります。評価方法としては,以下の1~5等があります。

1. 観察法…児童生徒の学校生活の様子を観察することで評価する方法。

2. 面接法…児童生徒と直接会話をすることで,その表情,態度や発言内容から評価する方法。

3. ノートや作文による方法…道徳ノートなどに記述された文章から評価する方法。

4. ポートフォリオ評価…道徳ノートや作文,役割演技等を収録した映像,プレゼンテーションなどの成果物を基に評価していく方法。

5. エピソード評価…児童生徒が道徳性を発達させていく過程で,発言や記述したものをエピソード(挿話)の形で累積していく方法。エピソード評価には道徳科の授業中の発言や記述した内容を累積してまとめた短期エピソードと,学校生活の中での言動や記述文などを累積してまとめていく長期エピソードがある。

評価のしかたについて

学習指導要領には「数値などによる評価は行わないものとする。」と述べられています。数字による評定は行わないわけですから,当然,記述式で評価することになります。児童生徒の道徳的なよさを認めたり,道徳的成長を見取ったりしながら記述していくことになります。そして,他者との比較ではなく,個人内評価をしていくことになります。道徳科の評価は,他の児童生徒との比較をすることではありません。教科のように到達すべき目標があって,その目標に到達したか否かを見取っていくことでもありません。あくまでも,個々の児童生徒に注目して,以前よりどれだけ道徳的成長があったかを見取ることになります。

今回の教科化で,指導要録に道徳科の欄が設けられました。この欄はあくまでも道徳科の授業内での学習状況や道徳性に係る成長の様子を記述することになります

回答者:富岡栄(とみおか・さかえ)

公立中学校教諭,管理職として,35年にわたり道徳教育の研究を続けてきた。
平成27年3月,群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。
退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会,日本道徳教育方法学会の評議員を務める。
平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。