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「美術準備室」番外編

広報課

光村図書出版株式会社

年2回発行の広報誌「美術準備室」。 ウェブでは紙面に掲載できなかった情報をお届けします。

N君の作品を鑑賞しよう!~鑑賞リポート~

「今の私」を,紙粘土を使って表現するという,鈴野江里先生(鎌倉市立岩瀬中学校教諭)の授業。「美術準備室11号」P8-9では,N君の作品を取り上げ,彼の作品を「発想ノート」とともに詳しくご紹介しました。ここでは,N君の作品をクラス全員で鑑賞したときの模様をご紹介します。


鈴野江里先生は,「これから一つの作品について,みんなで語り合いたいと思います。その後に,作者自身に作品のことを話してもらいますよ。いろいろな見方があっていいから,自分の見方や感じ方をどんどん発表してね」と投げかけ,書画カメラを使って,N君の作品を電子黒板に映し出しました。

画像,鈴野先生の授業風景

左/電子黒板に生徒作品を映す鈴野先生 右/N君の作品

「この作品を見て,どう感じた?」と先生が問いかけると,生徒は自分の見方や感じ方を,次々と口にしていきます。

生徒1 下の丸い部分が謎めいていると思った。

生徒2 上の部分だけを見ると,植物っぽい。先のピンクのところは花で,成長していく自分を表しているんじゃないか。

先生 下の部分はどう?

生徒3 下の部分は,これまで積み重ねた努力。上の緑とピンクの部分は,その努力を使って花を咲かせようとしていると思う。

生徒4 一つの花として見たとき,下のところが球根のように見える。そして真ん中の部分が土。そこから茎が伸びて花が咲いている。

先生 そういう見方もあるのか。おもしろいね。

画像,鈴野先生の授業風景

最初の「植物っぽい」という発言を受けて,植物として想像を膨らましていく生徒たち。

すると,ある生徒が「あっ」という顔をして,こう言いました。

生徒5 先生,(書画カメラで映すために横に寝かせている作品を)縦にしてみてもらえますか。

画像,授業風景

先生 こう?(といいながら,作品を手のひらに乗せて,みんなに見せる)

生徒5 ほら,ちょっと傾いていて,不安定なんですよね。

先生 確かに,ちょっと曲がっているね。

生徒5 その曲がっている不安定な感じが植物みたいだなと。「生きてる!」って感じがします。

先生 ああ,この不安定さから,生きている感じがしたんだ。なるほど,おもしろいね。他にはどう?

生徒6 色のことなんですけど。パッと見たとき,下の部分は青や緑などの色が使われているから,不安な気持ちを表しているのかと思いました。でも,その色の上に,赤やオレンジを重ねているから,そういう不安な気持ちを隠して,がんばろうって思っているんじゃないかな。

生徒たちからは,作品の形や色から,さまざまに想像を膨らませ,鑑賞していきました。一通り,生徒たちから発言が出たところで,「では,作者のN君にきいてみましょう」と先生が投げかけました。N君ははにかみながら,電子黒板の横に立って,作品を指し示しながら,制作の意図を説明していきます。

画像,授業風景

前に出て,自分の作品の説明をするN君。

N君 まず,下の白いところ(1)は,僕のピュアな心を表しています(笑)。

生徒一同 笑い

N君 その白い部分を,いろんな色で包みました。これは,僕がいろんな人たちに支えられていることを表しています。そして,真ん中の紫の部分(2)は,悩みとかダークな気持ち。そこから上に向かって伸びていく部分(3)は,未熟な自分を表すために,かすれたような色の塗り方をしました。ダークな気持ちを切り替えて,ポジティブに生きていけるよう,途中からオレンジ色(4)にしました。さらに,新たに成長していくイメージで緑(5)にし,先っぽのピンク(6)は,つぼみのイメージで明るい未来を表しています。

先生 さっき,少し曲がっているという意見があったけど?

N君 なぜ曲がっているかというと,真っ直ぐきれいに未来へ辿り着けるはずはない,という気持ちがあるからです。

先生 わざと傾くようにつくったんだね。


どうしてこういう形にしたのか,どうしてこのような色の塗り方をしたのか,N君の丁寧な説明を,他の生徒たちは真剣に聞き入っていました。

授業の模様をもっとご覧になりたい方はこちらから。

「美術準備室11号」授業リポート