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山崎先生の授業アイデア 第1回

山崎先生の授業アイデア

2016年4月18日 更新

山崎 正明 北翔大学教授

日々の美術の授業に役立つ、さまざまなアイデアをご紹介します。

第1回 「自己評価」を授業づくりに生かす

よりよい授業をつくるために、どうすればよいのか――。
先生方は日々、授業改善のために頭を悩ませていることと思います。改善のための視点や方法は多数あります。文献から学んだり、研究会等へ参加したり。私がもっとも大事にしてきたのは「生徒の声」に耳を傾けることです。

かつての私は、表現活動を通して達成感を味わわせることばかりを考えていました。達成感が次への意欲へとつながると思い、そのことを追究していました。ですから、目標となる作品のイメージがあって、そこに到達するような授業を目ざしていたのです。生徒たちは静かに、一生懸命取り組んでいるように見えましたし、それでよいと思っていました。

しかし、30代の頃に研究会で授業提案をする機会があり、改めて授業を見つめ直す中で「どのような作品をつくったか」ということよりも、「どのような力や心を育むべきか」ということを重視するようになりました。そこから、おのずと題材設定や授業内容が変わっていったように思います。

そして、生徒たち自身が、自分が今学んでいることにやりがいや価値を感じているのかどうかを常に考えるようになりました。本当は、毎時間、授業について生徒へインタビューできればよいのですが、それは現実的ではありません(たまにやっていましたが……)。その代わりに、生徒に振り返りをさせ、それを丁寧に見るようにしました。私はこの振り返りを、生徒たちの自己評価と捉えています。

具体的な例をご紹介しましょう。右のワークシートのように、生徒たちに毎時間、今日の授業で「感じたこと、考えたこと、学んだことなど」を書かせます。ワークシートの右端では、5段階で「充実度」を評価させています。「充実度」が低い場合、直接理由を聞くこともあります。

これらが授業改善のヒントになります。それは次の時間に生かすものもありますし、題材設定や教育課程編成のときに生かすものもあります。授業スタイルに関わるものも。

色鉛筆の字は私のコメントです。一クラス30分以内で書き終えるようにしています。時間の余裕がないときは、コメントは書かずに、次の時間で、クラス全体に対して生徒の取り組みを評価するようにしています。時には実物投影機で、制作途中の作品と自己評価を合わせて紹介することもあります。それぞれの学びを共有することで、学び合う姿勢が生まれると考えるからです。

このコメント欄には、記入時間をとっていません。授業の後に生徒が個々に書いています。慣れてくると、パッと短時間で書けるようになります。終業後に、生徒から自己評価を直接受け取るのですが、そのときは、結構ドキドキします。この自己評価が授業評価につながると思うからです。

画像、美術のワークシート

コメントを読んでいると、授業の中で考えていることや感じていることが、生徒によって実にさまざまであることが実感でき、とても勉強になります。このコメントを作品といっしょに展示したいなと思うこともあります。コメントによっては激しく反省することもありますが、だからこそ、授業改善に生かせると思っています。

生徒と対話しながら、よりよい授業をつくる方法の一つとしての事例でした。

山崎正明(やまざき・まさあき)

1957年北海道生まれ。北翔大学教授、元千歳市立北斗中学校教諭。北海道教育大学札幌校卒業。埼玉県で講師を務めた後、北海道の公立中学校教諭に。自身のブログ「美術と自然と教育と」で、授業実践や生徒作品などを紹介している。光村図書中学校『美術』教科書の編集委員でもある。

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