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山崎先生の授業アイデア 第7回

山崎先生の授業アイデア

2016年10月20日 更新

山崎 正明 北翔大学教授

日々の美術の授業に役立つ、さまざまなアイデアをご紹介します。

第7回 「存在証明」としての自画像

自画像は、中学校美術科で定番ともいえる題材。「自己を見つめて」というテーマで取り組ませている先生も多いかと思います。
しかし、中学生は思春期まっただ中ですから、悩みを抱えていたり、自分自身を好きになれなかったりする生徒が多くいます。そんな生徒たちに「自己を見つめて、自画像を描こう」と投げかけても、なかなか意欲的に取り組めないかもしれません。

自己肯定感をもてない生徒というのは、「本当は、自分はこうありたい」「よりよく生きたい」という強い気持ちをもっています。ですから、そのような生徒たちのことを考え、「こうありたい自分」を表現してみることを提案します。

私は、卒業制作として自画像に取り組ませています。その例をご紹介しましょう。私は、題材に入る前に次のようなスライド1~8を見せながら、生徒たちに「なぜ今、自画像を制作するのか」ということを、丁寧に伝えるようにしています。

自画像制作のためのスライド
1
自画像制作のためのスライド
2
自画像制作のためのスライド
3
自画像制作のためのスライド
4
自画像制作のためのスライド
5
自画像制作のためのスライド
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自画像制作のためのスライド
7
自画像制作のためのスライド
8
 

「今を生きる自分」を表現してもいいし、今の自分を好きになれない生徒に対しては「こうありたいという自分」を表現してもいい。自分の「存在証明」となるような自画像をつくろう、と投げかけます。

光村図書の中学校教科書「美術2・3」(P26-29)の「自画像、今を生きるあなたへ」には、アンジェラ・アキの「手紙~拝啓十五の君へ~」の詞と、「今を生きる自分、なりたい未来の自分をテーマに、ふさわしい表現方法であらわそう」という言葉が掲載されています。ぜひ、この詞や言葉も授業で活用していただけたらと思います。

導入の後は、ワークシート(※)を配布し、今の自分や、これからの自分についていろいろな視点から考える場をつくります。こうしたことを通して、生徒の中に主題が生まれていくようにしています。自画像制作は、部活動を引退し、進路について真剣に考え始める時期に行いますので、主題も自然と深いものになっていきます。さまざまな葛藤に苦しみながら前に進む3年生だからこそ、表現できることがあります。

※自画像制作の前に配布するワークシート

主題が決まったら、それを表現するためにど のような用具や材料を使えばよいのか、生徒自身が考え、決めていきます。教師は、表現方法を豊富に示すとよいでしょう。
義務教育の最終段階ですから、生徒たちは表現することに価値を感じ取り、これまでに学んできたことを生かしながら真剣に取り組みます。ですから、導入が主題を生み出すうえで、非常に重要になります。

画像、制作の様子

画像、制作の様子

表現のしかたは自由に決めさせる。粘土を使う生徒もいれば、水彩やアクリル絵の具を使う生徒も。

このようにして完成した作品は、学校に展示するのはもちろん、できれば校外でも展示し、保護者や地域の方も鑑賞してもらうとよいでしょう。中学校3年間の集大成といえる作品を観てもらうということの意味は大きいと考えます。

画像、作品展示の様子
自画像作品の展示に見入る生徒たち。

次回は、他教科と連携した授業をご紹介します。

山崎正明(やまざき・まさあき)

1957年北海道生まれ。北翔大学教授、元千歳市立北斗中学校教諭。北海道教育大学札幌校卒業。埼玉県で講師を務めた後、北海道の公立中学校教諭に。自身のブログ「美術と自然と教育と」で、授業実践や生徒作品などを紹介している。光村図書中学校『美術』教科書の編集委員でもある。

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