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山崎先生の授業アイデア 第10回

山崎先生の授業アイデア

2018年1月9日 更新

山崎 正明 北翔大学教授

日々の美術の授業に役立つ、さまざまなアイデアをご紹介します。

第10回 よりよい授業のために

本連載も、いよいよ最終回となりました。最後に、私がこれまでの教師生活で大事にしてきたことや、若い世代の先生方に心に留めておいていただきたいことを述べたいと思います。

1.生徒の可能性を信じる

 

小学校の頃から図工嫌いだったり、苦手だと思いこんだりしている生徒は多いことと思います。そのようなことをふまえて、題材そのものを工夫していきましょう。「やってみたい」、あるいは、「やる価値がありそうだ」など、題材が生徒のものになるような提案になっていれば、彼らはときに驚くような力を発揮します。題材は非常に重要です。生徒の可能性を信じて、彼らの意欲をかきたてるような題材を考えていきましょう。

授業風景

2.生徒の声を聴く

第1回でも述べたとおり、生徒の声を聴くことは授業改善の有効な手段です。あらゆる視点から生徒のよさを見つけるためにも、授業の課題を見つけるためにも、毎時間生徒自身がどう感じているかを捉えるようにしましょう。評価の観点は、生徒のよさを見つけるためのものでもあることを忘れないようにしましょう。

3.卒業制作からの授業改善

自分の授業をよりよいものにしていくために、卒業制作を強くお勧めします。単に卒業の記念となる制作ではなく、生徒たちがこれまで学んできた力を存分に発揮できるようなものにしましょう。義務教育の最終段階で集大成となる作品をつくるという豊かな体験は、これからを生きていくうえで貴重なものになると思います。
教師にとっては、卒業制作に取り組む生徒たちの姿を見ながら、自分が3年間積み上げてきた授業がどうであったかを振り返ることができます。この「卒業制作からの授業改善」は非常に効果的です。題材単位ではなく、3年間のカリキュラム全体を俯瞰して、卒業までに身につけさせたい力を考えることになります。
授業を考える視点として、新学習指導要領の「育成すべき資質・能力の三つの柱」(※)を参考にするとよいでしょう。

新学習指導要領の「育成すべき資質・能力の三つの柱」の図
※平成29年度 小・中学校新教育課程説明会(中央説明会)における文部科学省説明資料より

4.先生どうしで学び合う

機会があれば研究会に積極的に参加し、他校の先生の美術の授業を見ましょう。教師の授業力を高める有効な方法の一つです。忙しいときにはなかなか難しいかもしれませんが、長い目でみると自分が学んだことは生徒に還元されていきますので、時間をやりくりして参加することをお勧めします。
地域の研究会では作品を持ち寄り、自分の実践について話し合うこともあるでしょう。いわゆる完成度の高い作品ではなく、ひとクラス全員の作品を持ち寄ることは授業改善を考えるうえでも効果的です。有志でこのような研修を進めて、成果を上げているところもあります。なお、このとき、ワークシートやスケッチ、生徒の言葉、授業の画像や動画なども持ち寄ると、授業がより見えてきます。
自分の学校の他教科の先生の授業を見ることも、非常に勉強になります。他教科を参観することで、美術科との共通点や相違点が見えてきます。また、同じ生徒でも教科によって見せる姿が違うので、生徒自身を知るためにも役立ちます。同僚と授業について相互に学び合うことで、教科間の連携もしやすくなります。なお、授業を見合う以外に、ビデオで授業を撮影し自己評価するのも、とても有効です。

本連載は、これで最終回となります。長い間のご愛読、誠にありがとうございました。

山崎正明(やまざき・まさあき)

1957年北海道生まれ。北翔大学教授、元千歳市立北斗中学校教諭。北海道教育大学札幌校卒業。埼玉県で講師を務めた後、北海道の公立中学校教諭に。自身のブログ「美術と自然と教育と」で、授業実践や生徒作品などを紹介している。光村図書中学校『美術』教科書の編集委員でもある。

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