メニュー

デジタル教科書が
ひらく学び

中川 一史

放送大学教授

活用が広がるデジタル教科書。その魅力や,これからの授業のあり方について,インタビューしました。

中川一史(なかがわ・ひとし)

北海道生まれ。横浜市内の公立小学校教諭,横浜市教育委員会,金沢大学助教授,メディア開発センター教授を経て,2009年より現職。主な研究テーマは,国語科における映像メディアの理解と表現,デジタル教科書の活用など。著書に,『タブレット端末で実現する協働的な学び』(共著/フォーラム・A)など多数。光村図書 小学校『国語』教科書編集委員。

第1回 普及が進む 指導者用デジタル教科書

普及の背景

――文部科学省の調査(※)によると,全国の公立学校のデジタル教科書の整備率は,37.4%にも上るとのことです。指導者用デジタル教科書の普及には,どのような背景があるとお考えですか。

中川 学校のICT環境が整ってきているということが,大きな要因でしょうね。2009年から推進された「スクール・ニューディール」構想は記憶に新しいと思います。学校耐震化の早期推進,学校への太陽光発電の導入をはじめとしたエコ改修,それからICT環境の整備等を一体的に推進することを目ざし,予算が計上されました。これによって,各学校に電子黒板を導入する自治体が増えました。そして,2011年,地上デジタルテレビ放送の開始により,各学校へのデジタルテレビの導入が進みました。

こうした動きから,各学校の教室にデジタル教科書をいつでも投影できる環境が整ったこと。それが,デジタル教科書普及の背景となっていると考えられます。「手間をかけずに取り入れることができ,そのうえ効果がある」というのが,デジタル教科書を導入するかどうかの第一条件ですからね。

「平成25年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」(文部科学省)。全国の公立学校(小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校)を対象とする。

画像,インタビュー風景

子どもの学習意欲が高まる

――デジタル教科書のよいところは,どのような点にあるのでしょうか。

中川 一つ目として,「子どもたちの学習意欲が高まる」ことをメリットと捉えている先生方は多いでしょう。例えば,クラスのみんなの前に立って電子黒板を操作することに意欲をもつ子は多いものです。デジタル教科書には,画面を動かしたり線を引いたりと,自分が操作したことがインタラクティブに反映され,それが拡大提示されるというよさがあります。国語に苦手意識をもっている子でも,電子黒板上で線を引いたり印を付けたりして説明したことについて,クラスの友達が反応を示してくれると,学習に対するモチベーションが上がります。さらに,自分が注目されているということに価値を見いだす子もいるでしょう。黒板と紙の教科書だけを使った従来の授業よりも,子どもたちの学習意欲の高まりが感じられるんですね。

もちろん,これには,プロジェクタやパソコンを使ってプレゼンテーションをするという発表の場面が,各教科の授業の中で多くなってきた,という後押しもあると思います。ICT環境の整備が,学習場面にも波及しているということです。

拡大提示できるよさ

――クラス全体の前で発言したり発表したりするときに,よく活用されているのですね。

中川 はい。そのことにも関連しますが,二つ目に,「クラスで情報を共有することができる」というメリットも大きいでしょう。例えば,クラスで意見を出し合う場面。発言する子が電子黒板を使ってある部分に線を引いたり,指でさし示したりしながら,「ここの部分が」と言って説明することで,他の子どもたちはその箇所に注目しながら聞くことができます。国語では,挿絵や図・写真などを拡大しながら説明に使うこともできますね。子どもたちの意識を集中させて,焦点化して考えられるようにするというのは,意味あることだと思います。

加えて重要なポイントとして,拡大提示には,「余分な情報を排除して,見える情報を制限することができる」というよさがあります。子どもたちの目は,本当にさまざまものを発見します。しかし,授業展開上,本時ではまだ気づかせたくないといった情報も,画面の中にはあるはずです。そんなとき,画面を部分拡大することで,それ以外の部分が映らないようにするのです。

例を挙げると,国語の「くじらぐも」(1年下)の,1年2組の子たちがくじらぐもに乗っている場面の挿絵。初めから全体を見せてしまうと,子どもたちの興味は下の方に描かれている町や学校や雲の上の子たちの様子など,挿絵のさまざまな部分に拡散してしまいます。しかし,ここで,くじらぐもの部分だけを拡大して提示することで,挿絵のその他の部分は画面に映らなくなり,子どもたちの視線をくじらぐもに集中させることができます。「ここだけを見て」なんて言う必要がないんですね。これは,ねらいをもって挿絵や図・写真などの画面を提示するうえで,計り知れないよさといえます。

画像,デジタル教科書の画面

「くじらぐも」の挿絵を表示したデジタル教科書の画面

――提示する情報を制限できるというのは,重要なことなのですね。

中川 ええ。それから三つ目として,「根拠を明確にすることができる」というメリットが挙げられます。例えば,国語の「読むこと」の授業では,子どもたちが発言したことに関係する言葉や表現,挿絵を電子黒板で提示しながら,線を引いたり印を付けたりすることができます。意見の根拠となる叙述を確認することができるので,叙述に即して読んでいくうえで効果的です。

先生方の「いいな」という実感

――そのようなデジタル教科書のよさが,全国に広まってきたともいえるのでしょうか。

中川 そうですね。普段,授業研究や指導などで全国の学校へ伺うと,デジタル教科書にあまりなじみのない先生がデジタル教科書を使っている授業も参観します。そして,そうした先生方が,使い始めはちょっと及び腰だったのに,1回,2回と使い続けていくうちに,「これはいいな」と実感されるようになっていく姿をよく目にします。先生方のそのような実感が広がり,だんだんと定着してきたのかなと思います。

教室内の環境が整ってきたことと,先生方が活用の効果を実感してきていること。これが,冒頭に申しあげた「手間をかけずに取り入れることができ,そのうえ効果がある」ということであり,指導者用デジタル教科書普及の背景にあるものだと,私は考えています。

小学校デジタル教科書の詳細はこちらから。

小学校デジタル教科書

中学校デジタル教科書・デジタル教材の詳細はこちらから。

中学校デジタル教科書・デジタル教材