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デジタル教科書が
ひらく学び

中川 一史

放送大学教授

活用が広がるデジタル教科書。その魅力や,これからの授業のあり方について,インタビューしました。

中川一史(なかがわ・ひとし)

北海道生まれ。横浜市内の公立小学校教諭,横浜市教育委員会,金沢大学助教授,メディア開発センター教授を経て,2009年より現職。主な研究テーマは,国語科における映像メディアの理解と表現,デジタル教科書の活用など。著書に,『タブレット端末で実現する協働的な学び』(共著/フォーラム・A)など多数。光村図書 小学校『国語』教科書編集委員。

第2回 指導者用デジタル教科書が「加わった」授業

書き込む・消す・隠す・保存する

――全国の先生方は,指導者用デジタル教科書をどのように活用なさっているのでしょうか。

中川 色分けしながら文章に線を引いて,子どもたちの考えを共有するというのは,多くの先生方が実践されていることでしょう。その応用で,教科書本文の一部分を白く塗って隠し,子どもたちに考えさせるという使い方もあります。国語で,指示語や順序を表す言葉,キーセンテンスなどを隠すといえば,イメージしやすいかもしれませんね。そして,デジタル教科書のよいところは,線を引いたり隠したりした画面を授業の終わりに保存すれば,次の時間,そこから開いて使うことができるところ。書き込む,消す,隠す,保存するという機能を上手に使っている先生方は多いのではないでしょうか。

あるいは,収録されているワークをアレンジしたり,自分で画面に書き込んだりして印刷し,ワークシートとして使うといった,アナログな活用のしかたも挙げられます。

動画については,学習の前提となる知識を補ったり,学習活動のイメージやモデルを理解したりするために効果的ですが,その一方で,子どもたちが「わかったつもりになる」おそれも併せもっています。ですから,そのことを理解し,学習場面によって取捨選択するという使い方が多いと思います。

画像,デジタル教科書の画面

色分けしながら文章に線を引いた画面

――デジタル教科書のツールや資料をうまく活用されている先生が多いようですね。

中川 ええ。他に,教室の環境に応じた活用例もあります。前にもお話ししたように,学校によっては,デジタル教科書を投影するのに,電子黒板ではなくデジタルテレビを使っているところもあるんです。そうした学校では,文字が大きく映るように,画面を拡大して提示していることが多いですね。現在,広く普及している50インチのデジタルテレビは,教室全体で共有できるほどには文字が大きく映らないからです。50インチって,教室で使うとなると,実はそれほど大きなサイズではないんですね。言葉に着目させたい場面では,教科書紙面全体が表示される「教科書タブ」ではなく,文章のみが表示される「本文タブ」を使って,少しでも文字が大きく見えるように工夫している,というのはよく聞く話です。

画像,デジタル教科書の画面

教科書タブ

画像,デジタル教科書の画面

本文タブ

デジタル教科書の活用は「y = x²」

――先生方それぞれに,工夫なさっているのですね。

中川 そうですね。使い始めは,挿絵をそのままの大きさで映してみるという方が多いのですが,慣れてくると,それを拡大したり元に戻したり,部分拡大する場所を右から左に移動させて画面を動かしてみたり,あるいは書き込みをしてみたり……そんなふうに,皆さん,学習のねらいに合わせてさまざまな使い方を考えるようになってきます。
 
それから,「話す・聞く」動画。これはとても考えて作られていて,話したり聞いたりするときに大切なポイントが示された「解説あり」の動画と,「解説なし」の動画の両方が収録されているんです。ですから,そのときのねらいに応じて使い分けることができます。例えば,1回目に見せるときは「解説なし」の動画を使って,子どもたちが気づいたことを取り上げていく。2回目,3回目に見せるときは,「解説あり」のほうを使って,自分たちの気づきと比べながら見せるようにする。このように,情報を制限して与えることで,子どもたちを「わかったつもり」にさせずに,自分で気づかせることを促すような使い方をされる先生もいます。これはとても大切な視点といえますね。
 
加えて,デジタル教科書を6学年分すべて導入していれば,授業中に下学年での既習事項を振り返る,ということもできます。例えば,国語の「問いと答え」「初め・中・終わり」といった学習内容や学習用語について,「○年生のときに勉強したよね」と,その場ですぐに既習教材の画面を見せて確認することができます。そんなふうに,学年間で行き来しながら学習を進めるというのも一つの工夫ですね。

画像,デジタル教科書の画面

2年下「おにごっこ」の手引き(左)と3年上「言葉で遊ぼう」(右)

中川 他に,デジタル教科書に収録されているワークや,動画や静止画などの参考資料を教材研究に役立てることもできます。そして,そのように豊富な資料が収録されているということは,先生方が必要なときに選んで使えるということ。どこで何を使うのか,どこで何を使わないほうがいいのか,クラスの子どもたちの実態に応じた使い方ができるのがデジタル教科書の特長といえます。

――十分に活用できるようになるには,ある程度の経験や慣れが必要になってくるのでしょうか。

中川 私はよく,デジタル教科書の活用は,「y = x²」だとお話ししています。使い始めのときは,いつも決まった使い方をするだけで,そこから広がっていかないことがほとんどです。しかし,少し使い続けてみて,できることがわかってくると,活用の幅が一気に「ぐわっ」と広がる。この状態になればチャンスです。自分から進んでいろいろと試してみたくなりますし,別の教科でも使ってみたくなってくるものです。そして,あるところまで広がったところで,「やっぱりこういう使い方がいい」「こういうときには使わないほうがいい」などと,効果を意識した使い方に落ち着いてくるんです。活用のしかたの幅が,放物線を描くということですね。

「使い分け」を意識して

――デジタル教科書を使った授業に,魅力を感じる先生方が増えてきていると考えてよいのでしょうか。

中川 ええ。ただ,デジタル教科書を「使った」授業というよりも,デジタル教科書が「加わった」授業というほうが,より正確でしょうね。

デジタル教科書が,従来の教具に完全に取って代わるわけでは決してありません。デジタル教科書を使っている先生だって,黒板を使って板書をするでしょう。黒板は,子どもたちの思考を整理するうえで,これまでもこれからも重要な教具の一つですから。

例えば,国語の「おむすび ころりん」(1年上)で,着目させたい言葉とともに,その場面を表す挿絵を示したいという場合。これまでは,画用紙に自分で描き写した挿絵や,A4判などに拡大コピーした挿絵を黒板に貼ることがほとんどだったのではないでしょうか。でも,挿絵から情報を補いながら読む段階にある1年生の子どもたちがさまざまなことを発見するには,これでは小さいんです。

画像,インタビュー風景

中川 そんなとき,デジタル教科書を使って,挿絵を拡大して見せると,子どもたちは挿絵の中から多くのことを発見し,それによって文章を補いながら,場面の様子をより豊かに想像することができるでしょう。こういうときこそ,デジタル教科書を使いたい。しかし,叙述に立ち返るときには,黒板を使って重要な言葉を押さえていく必要があるでしょう。このように,デジタル教科書と,板書や他の教具との使い分け方を把握したときに,さらにデジタル教科書の魅力が感じられるようになるのではないでしょうか。

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