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デジタル教科書が
ひらく学び

中川 一史

放送大学教授

デジタル教科書の魅力や,これからの授業のあり方について,全4回でインタビューしました。

中川一史(なかがわ・ひとし)

北海道生まれ。横浜市内の公立小学校教諭,横浜市教育委員会,金沢大学助教授,メディア開発センター教授を経て,2009年より現職。主な研究テーマは,国語科における映像メディアの理解と表現,デジタル教科書の活用など。著書に,『タブレット端末で実現する協働的な学び』(共著/フォーラム・A)など多数。光村図書 小学校『国語』教科書編集委員。

第4回 学習者用デジタル教科書の可能性

「思考の手足」として使う

――学習者用デジタル教科書という新しい道具を手にして,子どもたちは,これまでとは違った能力を身につけることができるのでしょうか。

中川 「これまでと違った能力を身につける」というよりも,思考力や判断力,表現力など,これまで求められてきたのと変わらない能力を身につけるときの「助けになってくれる」というイメージです。
前に,「先生の側がどう把握し,関連づけ,束ねていくのか」というお話をしました。ただ,その一方で,今後は「先生が管理しすぎない」ということもまた重要になってくるといえます。将来的には,子どもたちが常時一人1台の端末を持つことが予想されます。そうなると普段使いができるので,メモを取ったり,考えを整理するために使ったり,情報収集のために使ったりと,子どもたちが自分の「思考の手足」として自由に使うことが可能となるはずです。そのときに重要なのは,個々の使い方を必要以上に管理しようとしない,ということなんですね。

画像,授業のイメージ

学習者用デジタル教科書を使った授業のイメージ

中川 日常,ノート指導をするときに,「はい,ノートを出して」「しまって」「ここで書く」「書かない」ということまで,高学年の子どもたちには言わないことのほうが多いですよね。でもきっと,扱う対象がタブレット端末やパソコンとなると,「出して」「書き込んで」「電源切って」などと,うるさいくらい言ってしまうし,言わないといけない場合も多くあります。これが何を意味するかというと,タブレット端末やパソコンが,まだノートのような文具にはなっていないということです。今はまだ,「ときどきしか使わない,大事な,共有物」なんですね。「文具」にはなりきっていない。きっと,「共有物」から「文具」の中間になりつつあるといったところだと思うので,その点を見据え,この学習者用デジタル教科書という道具との関わり方を,学校全体や自治体で考えていかなければならないと思います。発想の転換が必要になってくるのではないでしょうか。

学習スタイルの転換

――タブレット端末と学習者用デジタル教科書を日常的に使うようになることで,これまでとは違った学習経験ができるようになるということですね。

中川 そうですね。紙の教科書や指導者用デジタル教科書は,子どもたちにとって,どちらかというと情報を「受け取る」ものとして使われることが多いのではと思います。いっぽう,学習者用デジタル教科書を使えば,自分から何か働きかけて情報を取りに行く,組み替える,送るといった,能動的な学習が可能となりますし,そうした学習場面が増えてくるでしょう。子どもたちが経験する学習のスタイルは,これまでとは違ったものになってくると考えられます。

それから,「カスタマイズできる」という点にも着目したいですね。例えば,自分のパソコンは,たとえ同じ製品だったとしても人に貸したりはしませんよね。持ち主が使いやすいようにカスタマイズがされているから,誰かのものを借りても思うように使えないだろうし,借りたいとも考えないでしょう。学習者用デジタル教科書もパソコンと同じように,自分にとって使い勝手がいいようにどんどんカスタマイズして使っていくべきですし,それができるようになってほしいと思っています。それによって,学習者用デジタル教科書がより自分の「思考の手足」に近づいていくはずです。

一人1台のタブレット端末で学習者用デジタル教科書が使える時代がやって来たら,きっとそれを家庭に持ち帰って,学校の学習の続きに取り組む,といったことも現実となるでしょう。そのときには,学習履歴を含めた学習記録のデータ活用のしかたを考える必要が出てきます。先生による評価のためだけでなく,次の授業に生かしたり,授業中に子どもの考えを把握したりするための活用法について,検討していくことが重要なポイントとなるでしょうね。

――子どもたち一人一人の力に応じた学習をもたらしてくれる道具になりそうな気がします。

中川 これまで使ってきた紙の教科書,指導者用デジタル教科書は,決まった内容で構成されているため,子どもたちの実態に関わらず同じ内容のものを使って学習する,という授業が当たり前でした。しかし,学習者用デジタル教科書のカスタマイズが可能になれば,その子の実態に応じた内容を使って学習を進める,習熟度別に違った課題に取り組むなどといった授業のあり方も考えらえるのではないでしょうか。

――授業中,隣の子の教科書に入っている内容を参考にして,自分の教科書を作るという場面も見られるかもしれませんね。

中川 「いいものを探してきたね。それ,僕の教科書にもちょうだい」と言って,部分的なコンテンツを友達どうしで受け渡しできたりするといいですね。あるいは,同じページでも,少しずつ違った内容で構成された3種類が用意されていて,そこから選べるなど……カスタマイズするなかでもコミュニケーションが生まれるような作りになるといいですね。

「まずは使ってみる」を大事に

――これからICT環境を整備していこうと考えていらっしゃる先生方に,アドバイスをいただけますか。

中川 学校全体で「ICT環境の活用成熟度を見通す」ことをしてみていただくとよいのではないでしょうか。

画像,授業のイメージ

中川 重要なのは,タブレット端末・学習者用デジタル教科書が導入されたら,「まずは使ってみる」というのを大事にすることです。最初から「効果的な使い方になっているか」「使う意味があるのか」と厳しく追及されたら,ICTに苦手意識をもつ先生は使わなくなってしまうでしょう。それよりも,まずは子どもといっしょに使って楽しんでみる。これが第一歩です。校内の情報担当リーダーは,その後,様子を見計らって,次の活用効果を検討するフェーズに進んでいくようにする。そして,最終フェーズでは,「子ども自身が,学習者用デジタル教科書を使う場面やタイミングを判断する」という状態を目ざす。これはなかなか難しいことですけれどね。

今後は,新しいICT環境を利用して,よい意味で授業を再考していってもらえたらと思います。

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