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探求的な学習で
鑑賞を深める

一條 彰子

東京国立近代美術館主任研究員

教育普及プログラムに力を入れる東京国立近代美術館の,学芸員の方にお話を伺いました。

近年,教育普及に力を入れる美術館が増えています。
中でも東京国立近代美術館(東京都千代田区)は,1990年代から美術鑑賞に特化した教育普及プログラムを提供し続けています。1998年より教育普及専門の学芸員を置き,多様な層に美術館活用の促進を図るために多くのボランティアのガイドスタッフを育成しています。今回は,同館の教育普及すべてに関わる学芸員の一條彰子さんに,同館の「学校連携プログラム」と「子ども向けプログラム」を中心にお話を伺いました。

第2回 先生が学べる美術館

2015.08.26

――東京国立近代美術館では,教師向けのプログラムも充実していますね。

一條 そうですね。まず先生方に美術館や作品を体験していただくことが大切だと思っています。企画展ごとに「先生のための鑑賞日」を設けており,小中高等学校の先生は無料で展示をご覧いただけます。毎回1度のみですが,展覧会担当の学芸員によるギャラリートークや講座もあわせて実施しています。

当館の特徴的なプログラムとしては,教員研修が挙げられるでしょう。「美術館を活用した鑑賞教育の充実のための指導者研修」をご存じの先生は多いかもしれません。こちらは国立美術館全体で実施しているもので,全国の先生と学芸員が対象です。当館独自で行っているのは,団体向けの研修です。研修内容は先生方と一緒に考えています。対話による鑑賞を体験しながら指導側のメソッドを学ぶ,あるいはアートカードを使った鑑賞体験など,数時間から1日といった時間と,目的に応じた内容でプログラムを構成します。都内小学校の図工研究会や中学美術研究会の研修は,近隣の美術館とも連携して,毎年お手伝いしています。今年の例ですと,当館の募集型鑑賞プログラムにある,小学校高学年から中学生向け「トークラリー」を取り入れた研修も実施します。作品を自分たちで選び,ガイドスタッフと一緒に鑑賞するプログラムです。

画像,冊子の表紙

教師向けのプログラム内容は,同館発行の冊子「スクール・プログラム」(※1)や,同館のウェブサイト(※2)でも紹介されている。

※1 スクール・プログラム・ガイド(東京国立近代美術館)

※2 団体来館,教員向け研修,教材のご案内(東京国立近代美術館)

――教師向けの研修でも,子どもたち向けのプログラムが入ってくるんですね。

一條 探求的な鑑賞方法を体験してもらい,それを教室で実践してもらうことが目的ですから,いろいろと試行錯誤を重ねています。対話による鑑賞やアートカードも,当館での研修では先生方が生徒役を体験する,先生役を体験する,その双方のパターンがあります。

――そういえば,「国立美術館アートカード」(※3)は首都圏だけでなく,全国の学校が借りられるものですか。

一條 そうです。貸出用のカードセットに限りがありますが,ご利用いただけます。このアートカードは国立美術館5館合同で制作したもので,当館だけでなく,国立西洋美術館や国立国際美術館にも常備されています。各館のウェブサイトでも紹介していますので,確認してみてください。

画像,アートカード

※3 国立美術館アートカードセット(左写真)。

東京国立近代美術館(本館・工芸館),国立西洋美術館,京都国立近代美術館,国立国際美術館の5館の所蔵品と建築が収められた鑑賞用のツール。使い方や作品解説も付属している。

次回は,9月中旬アップ予定です。

関連書籍

『エグゼクティブは美術館に集う――「脳力」を覚醒する美術鑑賞』

奥村高明 著 定価:本体1,950円+税 / A5判,192ページ / ISBN978-4-89528-895-8

『風神雷神はなぜ笑っているのか――対話による鑑賞完全講座』

上野行一 著 定価:本体2,500円+税 / A5判,296ページ / ISBN978-4-89528-894-1