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そがべ先生の国語教室

宗我部 義則

お茶の水女子大学附属中学校教諭

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに,明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校教諭。お茶の水女子大学非常勤講師。国立教育政策研究所「教育課程実施状況調査問題(中学校国語)」作成および分析委員。平成20 年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

第9回 「比べる」ことで「読む力」を引き出す(1)
「走れメロス」(2年)

2015.12.09

画像,授業風景

前回,「比べる」という思考・活動が,「考える力」を引き出し伸ばしていくために効果的だと述べました(第8回参照)。

第8回 「比べる」ことで「考える力」を引き出す

今回は,「比べる」ことによって「読む力」を高めていく授業の例をご紹介しましょう。

「走れメロス」とそのモチーフになった「人質(シラー作)」を比較して読む授業です。

ご存じの通り,太宰治の「走れメロス」には,創作のモチーフになった詩が存在します。シラーの「人質」という詩です。「人質」にはいくつかの訳が知られていますが,太宰が見た可能性が高い『新編シラー詩抄』(訳:小栗孝則/改造社 1937年 ※光村図書『学習指導書』にも掲載)を使いました。

授業の概略は次の通りです。

  1. 太宰治「走れメロス」とシラー「人質」とを比べ読みして,作者が原詩に何を肉付けし,どう書き換えて小説化したのか,創作上の意図や,その変更から「走れメロス」を読み解く。
  1. 学習における取り扱い方
  • 「違い」の発見によって「なぜ変えたのか」という問いを引き出すことで,読みの目的と読んで表現する「必然性」を生み出す。
  • 気づいた「違い」について,自分の読み・解釈をつくり,他者との交流を経て,自分の解釈をまとめるという流れで展開する。
  1. 主題や人物の心情等の読解・追究自体は目標とせず,小説化にあたっての書き手の意図,小説における設定や表現の効果を読む読みの学習の成立を目ざす。

「走れメロス」と「人質」を比べると,生徒たちはどんな「違い」に気づくでしょうか。

「走れメロス」をA3用紙1枚に印刷した全文プリントで通読し,ひとしきり感想を話し合った後,次のように話して「人質」の全文プリントを配布し,次のように投げかけました。

「実は,太宰のメロスには元になった作品があります。ドイツの詩人で歴史学者でもあるシラーという人が書いた『人質』という題の詩です。読んでみましょう」

詩を読み終えた生徒たちは,一斉に沈黙しました。「感じたことを言って良いよ」と促すと,口々に,「そっくりすぎる」「メロスって太宰が作ったんじゃなかったの?」「これはパクリのレベル」などと感想を話しました。

そんな生徒たちに,私は次のように問いかけました。

「太宰は『走れメロス』を発表した際,『古伝説とシルレルの詩から』と明記していて,話の原典が存在することを表明しています。だから,パクリというのとは違いますね。一種の『詩のノベライズ(小説化)』なのです。それに,お話としてはどちらがおもしろかった?(生徒たちは「メロス」だと答えました。)この文量の『人質』から,この文量の『走れメロス』へと小説化する際に,相当な書き足しや変更をしていますよね。気づきましたか?」

すると,生徒たちは次々と「走れメロス」と「人質」の違いを挙げていきました。続きは次回ご紹介します。

Illustration: Chiaki Tagami

目次

【第1回】 響く声を育てよう <2015.03.31>

【第2回】 力のつく国語のノートづくり <2015.05.11>

【第3回】 話し合い指導(1)―土台固めを大切に― <2015.06.17>

【第4回】 話し合い指導(2)―進行,参加のしかた― <2015.06.29>

【第5回】 話し合い指導(3)―発表のしかた― <2015.07.13>

【第6回】 話し合い指導(4)―考えを可視化する― <2015.09.01>

【第7回】 語彙指導 ―「言葉の宝箱ノート」― <2015.10.13>

【第8回】 「比べる」ことで「考える力」を引き出す <2015.12.02>

【第9回】 「比べる」ことで「読む力」を引き出す(1)――「走れメロス」(2年) <2015.12.09>

【第10回】 「比べる」ことで「読む力」を引き出す(2)――「走れメロス」(2年) <2015.12.15>

【第11回】 読書指導――学校図書館と連携して読書に誘う(1) <2016.02.23>

【第12回】 読書指導――学校図書館と連携して読書に誘う(2) <2016.03.01>

【第13回】 国語学習 三つの誓い <2016.04.04>

【第14回】 デジタル教科書で読みを深める(1)――黒板ツールを使って <2016.06.07>

【第15回】 デジタル教科書で読みを深める(2)――黒板ツールを使って <2016.07.25>

【第16回】 デジタル教科書で読みを深める(3)――人物相関図を作る <2016.09.20>

【第17回】 デジタル教科書で読みを深める(4)――全文表示画面を使って <2016.09.28>

【第18回】 古典に親しむ――架空インタビューで読む「平家物語」 <2016.12.05>

【第19回】 古典を楽しむ(1)――「Contemporary Remix 和歌」 <2017.01.20>

【第20回】 古典を楽しむ(2)――「Contemporary Remix 和歌」 <2017.01.20>

【第21回】 古典を深める(1)――「旅に生きる~おくのほそ道~」 <2017.04.13>

【第22回】 古典を深める(2)――「旅に生きる~おくのほそ道~」 <2017.04.18>

【第23回】 説明文の読みの学習をもっと楽しく――「ダイコンは大きな根?」(1年) <2017.05.23>

【第24回】 リレー朗読で読む――「星の花が降るころに」(1年) <2017.08.30>

【第25回】 「対話的な学び」を引き出す――「誰かの代わりに」(3年) <2017.12.26>

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