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第11回 読書指導 ――学校図書館と連携して読書に誘う(1)

そがべ先生の国語教室

2016年2月23日 更新

宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校副校長

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第11回 読書指導
――学校図書館と連携して読書に誘う(1)

更新が滞ってしまってごめんなさい。
さて、今回のテーマは読書指導です。読書の大切さは今さらいうまでもないことですが、「知識基盤社会」という考え方に立つ現在の教育においては、その重要さはますます高まるばかりです。本を読むということは、自分の世界と外の広い世界をつなぐことです。自己枠組みを拡大する行為だといってもよいでしょう。言葉を通して、私と外の世界をつないでいく言葉の使い手を育てていくのが国語科の使命であるとすれば、読書指導は、実はその基盤なのかもしれませんね。

さて、私自身や周辺の様子をみると、「読書指導」というと、ほぼ図書館利用指導だったり、読書紹介をすることだったりというイメージの時期もあったように思います。しかし今では「読書活動」という言葉で表されるとおり、さまざまな読書の活動が展開されるようになりました。
さまざまな読書活動は、どれも読書への関心と意欲を高め、また実際に読書する実践力の育成が目的になっています。読書活動には少なくとも

(1) 読書への関心を広げ、読書生活を活性化する活動(本の帯やポップ作り・ブックトーク等)
(2) 課題を解決したり探究したりする意欲と力を高めていく活動(調べ学習での図書資料活用・情報活用等)

という二つの大きな柱があるように思います。そしてどちらにおいても大切になるのが「学校図書館との連携」だと思うのです。

(1)の「読書生活を活性化する活動」はそれこそ図書館との連携なしには効果も半減です。
例えば、「ポップ作り」では、作ったポップを図書館のその本といっしょに展示することでまさに「実の場」を得ますし、生徒がポップで紹介した本が図書館になければ、予算と相談しながら購入していくようにすると同世代の仲間のお薦めの本が読めるようになりますね。

生徒たちは小学校でもお気に入りの1冊を紹介する「読書紹介スピーチ」の経験はありますが、ブックトークの経験はほとんどありません。そこで、私はブックトークを行う場合には、司書さんとティームティーチングを行います。司書の先生は、校内にいらっしゃる「専門家」です。協力しない手はありませんね。

例えば、昨年のブックトークはこんな展開でした。

第1時  司書の先生のブックトークを楽しみ、ブックトークのコツを話し合う
第2時  ブックトークの目標を設定し、夏休み中にテーマと紹介する本を探す方法を学ぶ
(夏休み)
第3時  ブックトークの準備をする
第4・5時 ブックトークを行う
第6時  名人ブックトークを聞き、学習のまとめを行う

司書の先生のブックトークを聞いた後、「ブックトークって、どんな活動だった?」と尋ねると、

  • 複数の本を次々に紹介していた。
  • 1冊の本から次の本へ、お話がつながっていた。
  • どれも「海」に関係する本だった。

など、ブックトークの特徴をよくつかんでいました。
そこで、「テーマを決めて夏休みに本を集め、最低3冊をつないで紹介するブックトークを行う」という課題を示し、お手本のブックトークで司書の先生がどんな工夫をしていたか、どんなふうに話すと興味深く聞いてもらえるブックトークになるか、気づいたことを出し合いました。

こんなふうに司書の先生に手本を見せていただいて、そこから気づいたやり方を自分たちの言葉で発表し合うと、教師が整った言葉で説明するよりずっと実感をもって、「やり方」をつかまえます。
このときのブックトークでは、「最低3冊をつないで紹介」という課題はなんとか全員がクリアしました。それどころか、授業時間の面から設定した「5冊まで」という上限いっぱいに準備した生徒も少なくなかったので、予定した時間内で終わらなくなってしまったほどでした。

次回も引き続き、学校図書館と連携した読書指導についてご紹介します。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

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