みつむら web magazine

教科書の言葉 Q&A 第8回

教科書の言葉 Q&A

2015年9月29日 更新

教科書編集部 光村図書出版

教科書にまつわる言葉へのさまざまな疑問について、編集部がお答えします。

第8回 「ひとり」を漢字で書くときは?

Q:「ひとり」を漢字で書くとき、「一人」と「独り」は、どのように使い分ければいいのでしょう。

「独りで決めて一人でしゃべるから、こっちは困って顔を赤くした」。
これは、光村図書平成28年度版中学校『国語』1年に掲載されている夏目漱石「坊っちゃん」の中の一文です。同じ「ひとり」という言葉を、「独りで決めて」「一人でしゃべる」と漢字を使い分けています。

「一人」と「独り」の使い分けを明確に割り切ることは難しいですが、それぞれの字義から考えてみると、「一」は数を表しています。つまり「一人」と書いて「ひとり」と読ませる場合は、人数を意味しているといえます。一方の「独」は、この漢字自体に「ひとり」「ひとりだけ」「自分だけ」「自ら」という意味があります。「独学、独習、独演、独り言、独裁、独創」などの使い方から見ても、「独」には「自分だけで」という意味があるものの、人数とは無関係であることがわかります。
したがって、人数に重点を置くときは「一人」、状態や形態に重点を置くときは「独り」になると考えられます。

冒頭に、「坊っちゃん」の中の一文を例に挙げましたが、例えば次の文を比べてみると、その違いが理解しやすいのではないでしょうか。

◇結婚しないで独りでいる。
◇結婚していない人が一人いる。

ただ、「独り」とするか、「一人」とするかは、「ひとり」という事実の見方や捉え方によって決まる場合があります。例えば「ひとり暮らし」という言葉を、「独身で親も子もいない」という面から捉えれば「独り暮らし」のほうがよいし、「他に同居人がいない」という場合には「一人暮らし」のほうがよいということになります。
一般的には、次のような書き分けがされています。

◇「一人」
一人っ子・一人息子(娘)・一人旅・一人として・一人もいない

◇「独り」
独り言・独り占め・独り相撲・独り立ち・独り身

光村図書小学校・中学校『国語』教科書の中で「独り」を用いている例を探すと、「独りで」「独り言」「独りぼっち」「独り合点」「独り歩き」「独りよがり」「独り住まい」などが見つかります。いずれも、「独」という漢字を学習する小学校5年以上の用例です。

次回は、「器」と「機」の使い分けについてお答えします。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集