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教科書では、「ヶ」を使わないの?

子どもと大人の「ことばQ&A」

2023年2月27日 更新

光村図書 校閲課

ふだん何気なく使っている言葉も、ちょっと立ち止まって考えてみたら、いろいろおもしろいところが見えてきます。
このコーナーでは、教科書の校閲を担当しているメンバーが、言葉をめぐるさまざまな疑問を取り上げて解説していきます。

教科書では「○ヶ所」「○ヶ月」という表記を見ませんがどうしてですか。
他の書籍では、「○ヶ所」「○ヵ所」「○カ所」といった表記も見ます。どれが正しいのですか。

一般に、数詞に続けて物を数えるとき、「1ヶ所」「1か所」「1カ所」「1ヵ所」「1箇所」とさまざまな書き方がされています。どれが正しいのか、なぜいろいろな表記があるのか、疑問に思われた方もいるのではないでしょうか。
これらの表記は、どれも間違いというわけではありません。ただし、もともと、数詞に続けて物を数えるときには、「一箇所」「五箇条」といったように、「箇」という字を使っていました。そのため、「1箇所」もしくは「箇」を平仮名で書いた「1か所」が標準的な表記とされています。
教科書では、公用文等での慣例を踏まえ、数詞に続けて物を数える場合、「箇」の仮名表記である「か」を使うことで統一しています(【例】参照)。

「箇」「か」以外で、最もよく見られるのが「ヶ」という記号ではないでしょうか。これは、片仮名の「ケ」を小さく書いたものと思われがちですが、実は、そうではありません。
「ヶ」は、「箇」の略字である「个」の変形、または「箇」のたけかんむりの一つを採ったものとされています。あくまで記号的に用いられているものですから、教科書では、「ヶ」を使いません。ただし、固有名詞については、その固有の書き方に沿って表記しています。

mw_kotoba_16_01.png
【例】
光村図書小学校『国語』5年P221

これら以外にも、「1カ所」「1ヵ所」といった表記をご覧になった方もいるかもしれません。「カ」「ヵ」のように片仮名を使ったり小さい活字を使ったりするのは、「ヶ」が、片仮名の「ケ」を小さく書いたものと認識されてきたことによる影響と考えられます。「ヶ」を発音どおりの片仮名「カ」と書く習慣が生まれたということです。

「か」「箇」「ヶ」「カ」「ヵ」と、さまざまな表記が存在するのは、こういった経緯によるものです。どれも誤りというわけではありませんが、教科書では、平仮名の「か」を使用し、「1か所」「1か月」と表記しています。

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