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教科書の言葉 Q&A 第20回

教科書の言葉 Q&A

2016年9月30日 更新

教科書編集部 光村図書出版

教科書にまつわる言葉へのさまざまな疑問について、編集部がお答えします。

第20回 「二十回」は「ニジュッカイ」と読んでいいの? 

Q:子どもたちは、「二十回」を、つい「ニジュッカイ」と読んでしまうようです。
「ニジッカイ」が正しいと思うのですが、どうなのでしょうか。

教科書で示している漢字の読み方は、「常用漢字表」の「音訓」の欄に基づいています。「十」について、「常用漢字表」では、どのように示されているのでしょうか。

このように、「十」の音訓として示されているのは、「ジュウ/ジッ/とお/と」の四つで、ここだけを読むと、「ジュッ」という読み方はないことになります。もともと「十」は「ジフ」と発音したことから、促音便化するときには「ジッ」と発音するのが基本となるのです。

しかし、音訓の欄からさらに視線を右に移してみると、「ジッ」の備考欄に「『ジュッ』とも。」と示されています。これは、どういうことなのでしょうか。
この「『ジュッ』とも。」という記述は、平成22年11月に新しい「常用漢字表」が告示された際に追加になったものです。今回寄せられた質問には、「子どもたちは、つい『ニジュッカイ』と読んでしまう」とあります。この子どもたちの様子に表れているように、「ジュッ」という読み方が無視できないほど一般的になっているということが、備考欄に追加された要因といえるでしょう。
ただし、あくまで「備考」に示されていることを考えると、「ジュウ/ジッ/とお/と」の四つの音訓が基本であるといえるようです。

それでは、教科書ではどのように示しているのでしょうか。
「十」の漢字を学習するのは、1年上巻120ページ「かずと かんじ」の教材です。また、小学校の教科書各巻の巻末には前の巻までに学習した漢字をまとめた、「これまでに習った漢字」というページがあります。

教科書紙面
平成27年度版 光村図書小学校『国語』1年上P120
教科書紙面
平成27年度版 光村図書小学校『国語』3年上P136

このように、1年「かずと かんじ」では「(じゅっ)」、「これまでに習った漢字」では、「〈ジュッ〉」と示しています。
これは、音訓欄に追加されたものではないとはいえ、常用漢字表に示されたということは、「ジュッ」という読みが認められたものとして扱う必要がある、と考えたためです。ただし、「( )」や「〈 〉」を付すことで、基本となる他の音訓とは区別し、一段下の扱いであるという意味をもたせています。

今回の質問への回答をまとめると、「『ニジッカイ』という読み方が基本だけれども、『ニジュッカイ』も誤りではない。」ということになります。
常用漢字表では、「ジュッ」という一般化した読み方を、音訓欄で取り上げるのではなく、また、取り上げないのでもなく、備考欄に示しました。そこには関わった方々の、「漢字使用の目安として、本来の使い方に基づく読みを提示すべき」という思いと、「現代の一般化した使い方に対応したい」という思いの両方をみてとることができるようですね。

次回は、横書きの文章の読点についてお答えします。

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