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2011年秋 石井琢朗 「無限の可能性を広げる」

日本プロ野球界を代表する内野手であり,チャリティ活動や教育支援活動も積極的に行っている石井琢朗選手(2011年当時,広島東洋カープ)をゲストに迎えました。

第3回 「自分で考える力を」

今の子どもたちを見て感じることはありますか。

僕は認定NPO法人であるチャイルド・ファンド・ジャパンの活動で,フィリピンの子どもたちの里親として教育支援をしています。その子どもたちからの手紙を読むと,貧しい現実の中でも,夢に向かって頑張る姿がすごく垣間見えてきます。

 今の日本は便利になりすぎている,恵まれすぎていると思うんです。昔ながらのいいところ,不便さが失われつつある。何でも手に入る時代だし,ちょっと何かをすれば,すぐに何でもできてしまいます。だから,自分で考えることが少なくなっているんじゃないかな,と感じるんです。
 そういう意味で,絵本など昔ながらのいいものや,今失われつつあるものを残したい…と思います。大袈裟ですけれど(笑)。

子どもたちにとって,本を読むことや,読んであげることは大事ですね。

そうですね。僕も,国語は基本的に好きだったんです。特に,詩が好きでしたね。詩は,想像力を駆り立てられます。
 例えば,はっと空を見上げて青い空が一面に広がっていても,それを普通の真っ青な空と見るか,澄んだ空と見るかは人それぞれです。そういう表現の自由さがあり,いろいろなものをイメージできるので,詩は特にいいですね。

国語では,想像力や考える力に加えて,それらを人に伝える言葉を学ぶことも,大きな役割の一つです。

言葉のもつ意味ってすごいと思うんです。こうやって僕が発する言葉も,10人いたら10人全員が違う捉え方をするでしょうし,印象はそれぞれ違います。

石井琢朗

僕自身もブログを書きながら,すごく言葉に気をつけているんです。語尾や言い回しひとつでその人の印象が全然変わってくるので。
 伝言ゲームではありませんが,やはり第三者を介することで,最後は全然違う言葉が伝わってしまいます。自分の言葉で書くことによって,それを発信するのは自分の責任だという責任感をもってやっています。

 言葉って,すごく心に残るんです。だから僕は,言葉のもつ意味を,そんなに簡単には考えていない。なるべく自分の言葉で,自分の言い回しで伝えたいと思っています。

石井琢朗

最後に,子どもたちとの活動を通じて感じていることを,保護者,学校の先生方へのメッセージとしてお聞かせ願えますか。

 僕は活動を通して,子どもたちが夢に向かって頑張っているからこそ,僕たち大人がもっとしっかりしないといけない,と痛感しています。

 教育を受ける生活環境が,人間を形成していく上で大きな要素になります。実際に僕らも大きくなって,親や周りの方々の影響をすごく受けていると思うんです。ですから,近くにいる大人が,子どもたちの手助けをできるような生活環境を作っていくべきではないでしょうか。
 子どものもつ無限の可能性を摘み取ってしまうのも,伸ばしてあげるのも,周りの大人次第です。

石井琢朗[いしい・たくろう]

石井琢朗

1970年栃木県生まれ。プロ野球選手。足利工高では,エースとして甲子園に出場。88年ドラフト外で投手として横浜大洋ホエールズ(現横浜ベイスターズ)に入団。1年目に初勝利を挙げる。4年目から野手に転向し,98年にはチームの38年ぶり日本一に貢献。ゴールデングラブ賞4回,盗塁王4回,ベストナイン5回,最多安打2回,オールスター出場6回,日本シリーズ優秀選手賞1回など,球界を代表する内野手として活躍。2006年には史上34人目の2000本安打を達成し,名球会入りを果たした。08年オフに広島東洋カープへ移籍。遊撃手としての最多出場記録保持者。
 現役選手を続けながら,チャリティ活動や教育支援活動も積極的に行っている。著書に『疾走!琢朗主義』(ベースボールマガジン社)がある。