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5 授業の始めに注意すべきこと

はじめよう、対話による鑑賞の授業

2015年1月22日 更新

美術における鑑賞を通した言語力育成が求められています。全国各地の学校や美術館で行われる美術鑑賞の授業の形として、先生や学芸員の解説を一方的に聞くのではなく、生徒自身が主体的に発言をし、対話をしながら美術作品に対する見方や価値意識を深めていく「対話による鑑賞授業」が注目されてきています。

授業の始めには、どのようなことに注意すればいいでしょうか

初めて対話による鑑賞の授業を行うときは、この授業のねらいや特徴について次のように説明します。

この授業には正解はありません。いい意見やおもしろい見方はありますが、まちがった意見や、変な見方はありません。作品を見て自分が感じたことや考えたことを発表し合って、みんなで楽しみましょう。

そのあとに、下記のような授業の約束を示してください。

(1)しっかり見る
(2)よく考える
(3)手を挙げて、考えたこと感じたことを大きな声で話す
(4)他の人の発言をしっかり聞く

自意識の強まる中学生の場合には、学級の実態に合わせて「こういうことを言えば注目されるだろうというような受けをねらう発言は控えましょう」という指示も時には必要です。
また、理科や数学の授業などでも話し合う学習を日常的に経験している生徒は、話し合いを法則や定理などの「正解」を見つけるための手続きととらえがちです。だれの意見が正しいのかという視点で話し合いかねません。意見のつぶしあいに終始する授業も見られます。
そんな場合には、もう一度この授業のねらいと特徴を繰り返し、他者の意見を尊重することや、意見の交流を楽しむような助言をしてください。

授業が始まりました。作品は少なくとも30秒ぐらい見せてください。
先生にとっては見なれた作品であっても、生徒は初めて見ているのです。せめて30秒はじっくりと作品を探索する時間を与えてください。生徒の顔を見ながら最初の質問をします。

何が見えますか?お話ししてください。

基本的にはどのような作品であっても、この質問で始めてください。回数を重ねればこの質問の意味が生徒にも自然と伝わるようになります。この問いかけの趣旨に沿った言い方であれば、発達の段階に合わせた言い方に変えてもけっこうです。

関連書籍

対話による美術鑑賞の決定版!
『風神雷神はなぜ笑っているのか 対話による鑑賞完全講座』 (上野行一 著)

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