学校再開後の授業で大切にしたいこと (1)今こそ、道徳科を学ぼう! (生徒の皆さんへ)

2020年7月10日公開

関西福祉大学准教授 新川靖

今、皆さんに求められている力は何でしょうか。未来を生きるということを考えたとき、それは「よりよく生きる力」であるといえるでしょう。

学校が再開されて、友達と出会ったとき、とてもうれしかったのではないでしょうか。「同じ空間」にいて、身近な出来事から、時には社会の問題まで、互いの話に耳を傾け合ったのではないですか。一人で考えるよさと同じぐらい、友達といっしょに話し合ったり考えたりすることにはよさがあるのです。そうやって皆さんは、友達といっしょに感じたことを共有することで「自分の世界」を「みんなの世界」へとつなげ、広げているのです。

しかし、情報化社会が進む現代では、これまでに比べて「世界」がより大きく、早く変化しています。そして、新型コロナウィルスの流行によって、「一つの出来事により、これまでのあたりまえが変わっていき、予想もしなかった生活が求められる可能性」があることを実感したのではないでしょうか。長い歴史の中で、これまでの生活や状況が一変する出来事は何度も起こりました。ですが、今の皆さんにつながるずっと昔の人々も、そのような中で最善を目指し、よりよく生きようとし、私たちに命や文化をつないでくれました。つまり、私たちも、未知の状況の中であっても、一度しかない人生を自分自身で考えて、「人間としてよりよく生きよう」としなければならないのです。

道徳科はまさに、この「人間としての生き方」について、自分自身を見つめ、友達と共に学ぶ時間です。私は、道徳科の授業は、テストもなく入試にも利用されないけれど、大人たちも知らない「未来」で活躍するであろう、皆さんにとって、とても大切な時間であると考えています。

もちろん、皆さんのよりよく生きようとする心は、日常生活や学校の授業、部活動、さまざまな体験などでも育っていきます。一方、道徳科は、教室で、友達といっしょに、これまでの体験や経験などをもとに、自分自身と向き合って考えます。まずは、教材に描かれた道徳的な問題について友達といっしょに考えます。ここでは、友達の道徳的な価値についての考え方や感じ方に触れることが、いちばんの学びです。なぜなら、友達の意見は全て、その友達の体験や経験がもとになっているのです。ぜひたくさん話をし、コラボレーションしながら考えましょう。そして、みんなで教材についてコラボして考えたことをもとに、次は、スポットライトを自らに当て、「人間としての生き方」と自分自身とを見つめ直すのです。

これから訪れる未来をよりすばらしいものにするために、道徳科で「人間としてよりよく生きる」とは何かを友達といっしょに語り合いながら考えていくことは、教室に、皆さんが戻ってきた今だからできることです。ぜひ、道徳科で楽しんで学んでくださいね。

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Illustration: はしもと

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