中学校の道徳科におけるワークシート活用の方法

中学校の道徳で、「考え・議論する」「多面的・多角的に思考する」ために、ワークシートを効果的に活用する方法について、三宅健次先生(千葉大学教育学部特命教授・附属中学校副校長)がご紹介します。

ワークシートの役割

道徳の授業では、「考え・議論する」「多面的・多角的に思考する」ことが求められています。さまざまな角度からじっくりと考えたことをまとめたり、友だちと議論した内容を整理したり、授業を振り返ったりする上で、学習内容を記録するワークシートはたいへん重要な役割を果たします。

また、このワークシートは、授業後に一度回収することで、評価にも活用することができます。道徳が教科化されることにより、道徳の授業においても評価することになりました。道徳の場合、テストを行って評価するものではありませんので、授業でのワークシートは、評価するための材料としてたいへん重要となってきます。また、指導と評価の一体化といわれるように、生徒のワークシートの書き込みを通して、教師側の授業のねらいが達成できたか、指導を振り返る材料にもなります。

ワークシート作成上の留意点

考え、議論する道徳の授業の実現に向け、ワークシートには自分の考えだけでなく、友だちと議論した内容を書き込むところも設ける必要があります。

また、ワークシートに発問を記述する際、あまり具体的に示してしまうと、授業の展開が読めてしまい、思考の方向性を決めてしまう懸念があります。授業の展開が読めないように留意し、できるだけ具体的に示す工夫が求められます。教科書を使用する場合には、教科書にある発問を参考にするとよいでしょう。また、教師側の「このように考えさせたい」という思いが強くなりすぎて、生徒の思考を誘導してしまうような発問にならないよう気をつけることも大切です。

ワークシートは授業ごとに作成しなければなりませんが、ある程度共有できるフォーマットを用意しておき、授業によってカスタマイズできるようにしておくと、作成の手間が省け、同様の形式で整理もしやすくなります。

ワークシートの活用

授業ではワークシートを保管するためのファイルを用意し、授業ごとに綴じさせておくと必要に応じて学習の振り返りをすることができます。また、表紙に年間授業記録表をつけておくと学習履歴をすぐに確認することができます。

2時間扱いの授業を想定している場合には、ワークシートを両面印刷しておき、1時間目の授業の終了時に表面が書き込まれているプリントを一時回収し、それをもとに2時間目の授業ではさらに掘り下げて考えさせる授業をすることもできます。

ワークシートは必ずしも紙媒体にこだわる必要はありません。ICT機器が充実しており、1人1台タブレット端末が整備されている場合には、デジタルデータのワークシートを生徒のタブレット端末に送付し、授業後にデジタルデータとして回収したり、所定の場所に保存させたりすることができます。紙媒体とは異なり、他の生徒の考えをリアルタイムに授業内で反映させたり、文字だけでなく画像等のデータも合わせて保存できたり、データの加工が容易であったりするので、効果的に授業を進めることができます。

ワークシート例はこちら (680KB)