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質問21 ねらいから外れる発言が子供から出たときは、どうすればいいの?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

道徳科の授業は、教師と児童生徒、児童生徒相互の対話を重ねながら、ねらいの達成を目ざし行われます。その際の授業の流れは、教師が十分に練り、計画した学習指導案に沿って進行していきます。しかし、授業は「生きもの」であり、計画どおりになるとは限りません。例えば、教師はいろいろな反応があることを予想して指導案を作成していきますが、展開の途中で教師の設定したねらいと全く異なる想定外の発言がある場合もあります。このような場合、それが真剣に考えた末の発言であれば、理解し、受け止め、認めていくことが道徳科の基本姿勢です。そして、同時に、その理由についても聞き取ることが大切です。理にかなった理由ならば、今後の指導過程に生かして再構成していくこともできます。もし、仮に教師の意図したねらいと異なる方向性の発言が続くようであれば、それは教師の教材の読み取りや児童生徒に対する見取りが不十分であり、指導過程やねらいの設定に無理があったといえるでしょう。そのような場合は、どこに原因があったのかを検討し、授業改善を図っていくことが必要です。

また、授業の核心場面である中心発問や終末で、教師の意図した本時のねらいと異なる発言がある場合もあります。このような場合は、確かに、ねらいとしたことが把握されていないので、授業評価という点では厳しい評価を受けることになるでしょう。しかし、ねらいどおりでなくても、児童生徒に道徳的価値の自覚があったとすれば、それはそれで道徳的学びがあったということです。もし、ねらいと異なる道徳的価値に児童生徒の目が向いていたとすれば、その要因を検討することで、ねらいに近づけるための授業改善のヒントが得られます。

一般的な事例ではありませんが、学級の中には、こだわりや自己主張が強くて、授業の本質から外れた発言をする児童生徒がいる場合があります。そのような児童生徒の発言にも耳を傾けることは大切です。ただ、そのような児童生徒の発言は、鋭い視点からの発言もあり、話し合いを深めることもありますが、本論から脱線する可能性もあります。論点が著しく異なっていたり、一つのことにこだわった発言が続くようであったりすれば、授業後に本人が課題と思ったことについて話すことを約束したうえで、授業を先に展開していくことも必要です。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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