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学力を伸ばす学級経営Q&A 第5回

学力を伸ばす学級経営Q&A

2019年1月17日 更新

神山 安弘 専修大学客員教授

「主体的・対話的で深い学び」の視点から学級経営を考えるヒントを紹介します。

神山安弘(かみやま・やすひろ)

1951年横浜市生まれ。専修大学客員教授。元東京都江東区立明治小学校統括校長。文部科学省「全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議委員」などを歴任。

第5回 1月の学級づくりのポイント

子どもにとって学級はどのような場所でしょうか? それは、そこに行くことが楽しく、待ちどおしいと思う場所です。なんでも話し合える友だちがいる、自分のことを理解してくれる先生がいる、分からないことが分かるようになり、できないことができるようになる、それが子どもにとっての「学級」です。

学級は、教師が子どもの個性や可能性を見つけ「育てる」場所であり、子どもが自分の力を発揮しながら「育つ」場所です。優れた学級経営は、子どもの心や学力を育てます。そして、学級づくりが進むと「子どもの力」は伸びます。

このコーナーでは、若い先生方から寄せられた質問をもとに、私の長年の経験を通して見えてきた「子どもの学力を伸ばす」学級経営の在り方についてお答えします。

Q.学級の子どものために保護者に教育活動の理解や協力を心がけていますが、学年末の「保護者とのかかわり方」はどのようにすればいいのでしょうか。

◆ 1月の学級づくりと「保護者とのかかわり方」

1月は子どもが学級集団の中で自分らしく、そして自分の存在が学級集団で役に立っていることを実感しながら生活できる時期です。担任は学級経営を充実させるとともに、子どもに新年という「新たなスタートライン」で次につなげる自信をもたせる時期ともいえます。そのために、保護者と連携を十分に図りながら学級経営を進めることがポイントです。

また、保護者も子どもの成長を実感でき、充実した一年にしたいと願っています。担任と保護者は、学習面の定着だけでなく子どもの基本的生活習慣や学習習慣の定着、成長を支える環境など、子どもの意欲、自信、忍耐など「非認知的能力」を育むためにも、信頼関係を築き協力して子どもを育てることが大切です。

◆担任として「保護者」と向き合っていますか?

担任は新年度がスタートした4月から保護者に、「保護者会」「授業参観」「個人面談」などを通して、学級経営の考え方や学級や行事での子どもの様子を伝えたり、学級づくりの思いや子どもの成長する姿について保護者と話し合ったりしながら、信頼関係の構築に努めてきたと思います。

保護者は一年間のまとめの時期を迎え、新しい学年に向けた子どもの課題や学級の課題が気になる時期です。また、わが子の成長に不安を感じることもあります。「学習内容が定着しない」「友だちとの人間関係」「学校に行きたがらない」など、保護者は多様な課題を抱え家庭でどうしたらよいか困っています。そのため、学校や担任に解決を求めるために期待が大きくなり、意見や要望という行動にでることがあります。

担任として、慌てず保護者に向き合い、しっかり話を聴き、問題の解決に向けた最善の方法を求める姿勢が大切です。

◆「保護者への対応」のポイント

1.日ごろからのコミュニケーション

お互いを理解し合っていないと真意が伝わらず、誤解が生じることがあります。保護者と担任の信頼関係が深ければ、子どものことを本音で話し、前向きに対応していくことができます。普段から保護者会のほか、連絡帳、学級だよりの他、必要に応じて電話なども活用し、子どもの様子を伝えるなど保護者とのコミュニケーションを大切にしましょう。

2.保護者どうしのトラブルへの対応

子どもどうしのトラブルが保護者どうしのトラブルになり、担任が対応することがあります。学年主任・管理職に相談しながら、対応を先延ばしせず「誠実」に「迅速」に対処することが大切です。「正確な事実の整理」、「中立の立場」、「聞いた話は記録する」などの基本を徹底し、保護者どうしが信頼を回復するように心がけるようにしましょう。

3.学校や担任への指摘や要望への対応

保護者からの指摘や要望の全てが「クレーム」ではありません。まず担任として、慌てずしっかり話を聞き、その指摘や要望が常識を超え理不尽と思われる内容か、指摘に正当性が認められる内容なのかを見きわめることが大切です。その際、学年主任・管理職に内容を「報告・連絡・相談」しながら適切に対応するようにしましょう。

◆「楽しい学級」と保護者

1月の学級は、子どもの交流が広がり、授業だけでなく学級全体の取り組みでも充実した活動ができるようになります。また、自分らしく個性を発揮するとともにお互いに尊重するようになります。保護者は子どもが元気に楽しく登校する姿に、学校や担任への信頼感を強くします。そのために、担任はしっかり子どもを見つめ次の3点から学級を確認してみましょう。

1.子どもが「安心」して過ごせる学級

学級生活で起こる課題をみんなの力で解決できる、困っている子どもへの配慮をさりげなくできる、お互いのいい面を発見し認めることができるなど楽しい学級。

2.「個が輝き 共に生きる」学級

学級集団が充実するために子どもが個性を発揮すること、そして個性を認め合い、集団として共に生きる共生の心を育むことができる学級。

3.「秩序」と「人間関係」のある学級

学級で質の高い授業や活動が成立するために、学習ルールや学習規律と親しみのあふれる人間関係が成立し、「正しいこと」が尊重される学級。

次回は、3月の学級づくりについて取り上げます。

Illustration: みずうちさとみ


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