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第3回 言葉の引き出しづくり―低学年編―

青山先生の国語教室

2016年8月30日 更新

青山 由紀 筑波大学附属小学校教諭

子どものモチベーションをアップさせる、国語の授業アイデアをご紹介します。

第3回 言葉の引き出しづくり―低学年編―

自分の考えを表現したり、状況を説明したりするとき、他者に伝わる的確な言葉を見つけたいものです。例えば、「言う」という動詞は子どもたちがよく使う表現ですが、状況に応じて、もっと的確な表現に置き換えることはできないでしょうか。「言う」と同じ語群には、「ささやく」「どなる」「わめく」などがあります。これらの言葉を使い分けることができると、表現の幅はぐんと広がるでしょう。「ささやく」「どなる」「わめく」は、児童書や日常生活で耳にする言葉であり、子どもたちもよく知っています。でも、いざ書こうとするとすぐに出てこない。そんな状況はよくあることだと思います。知っている言葉(理解語彙)を、使える言葉(使用語彙)にするにはハードルが上がるのです。

語彙を学習するうえで大切にしたいことは、単なる言葉集めに終始するのではなく、使用できる語彙を増やすことです。そのためには、6年間の中で、少しずつステップを踏みながら学習していくとよいでしょう。

低学年の場合、まずは理解語彙でいいので、動詞のレパートリーを増やすようにします。
例えば、助詞「を」の短文作りをする際、動詞を集める学習を同時に行うようにします。「手を~」「服を~」など、最初の言葉を教師が示して、それにくっつく動詞を考えさせます。「手をあらう、たたく、かむ…」「服をぬぐ、しまう、きる…」など、生活の中で使う動詞でしたら、低学年の子どもたちでもたくさん出すことができます。

それから、教材の中の動詞に着目させて、他にどんな表現があるか考えさせるという学習もよいでしょう。例えば「見る」には、「見つめる」「のぞく」「ながめる」などの表現があります。どの言葉を使うかによって、人物の居る場所・視点が変わります。また、人物の心情・状況なども関わってきます。「動詞」の意味をしっかり理解することは、内容の読み取りにもつながるのです。語彙指導は単発で行うのではなく、さまざまな学習と関連させて行うことが大切です。

低学年は、動詞のほか、様子を表す言葉(形容詞、形容動詞)もたくさん増やしたいものです。以下のような、子ども向けの言葉図鑑を活用して、言葉の引き出しを増やしていくのもおすすめです。(談)

画像、ようすのことばすかん、表紙

はじめてのもじ・ことばシリーズ4
「ようすのことばずかん」
絵:宮西達也/学研

物の性質や様子を表す言葉、音や声をまねた言葉などを700語収録。イラストとともに言葉を提示しているので、使い方や意味がよくわかります。動物園、洋服売り場、お寿司屋さんなど、子どもが親しみやすい場面が満載です。

※本書は絶版のため、図書館や古書店などから入手してください。

画像、言葉図鑑、表紙

「言葉図鑑」全10巻 
監修・制作:五味太郎/偕成社

言葉を品詞ごとに分け、1巻ずつにまとめた言葉の図鑑。1巻は「うごきのことば」(動詞)、3巻と4巻は「かざることば」(形容詞)(形容動詞)です。言葉の意味をユーモラスな絵で表現した楽しい図鑑。基本的な単語・品詞の使い方が無理なく学べます。

画像、ものの名まえ絵じてん、表紙

ことばっておもしろいな「ものの名まえ」絵じてん 全5巻  
編・著:WILLこども知育研究所
監修:森山卓郎、青山由紀 /金の星社

ものの名前をイラストとともに紹介。上位語・下位語を意識させることができる絵図鑑です。

次回は、理解語彙から使用語彙へステップアップするための指導方法をご紹介します。

青山由紀(あおやま・ゆき)

東京都生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。日本国語教育学会常任理事。全国国語授業研究会常任理事。著書に『古典が好きになる』(光村図書)、『板書 きれいで読みやすい字を書くコツ』(ナツメ社/樋口咲子共著)、『子どもを国語好きにする授業アイデア』(学事出版)などがある。光村図書小学校『国語』教科書編集委員を務める。

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