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第6回 宇宙連句づくりの可能性?

空を見上げてみよう

2019年5月7日 更新

山中 勉 宇宙航空エンジニア

山中勉さんが各地で行っている出前授業の様子や、生徒が紡いだ五・七・五の言葉をご紹介します。

宇宙連句づくりの可能性?

これまで、宮城県女川町の中学生が紡いだ五・七・五の言葉を出発点とし、全国各地の言葉のやり取りを紹介してきました。最終回となる今回は、山中さんにこれまでの授業を振り返っていただきました。

女川中学校(宮城県)、北方中学校(佐賀県)、瑞穂中学校(東京都)の生徒たちは、宇宙連句づくりを通して、どのようなコミュニケーションを試みたのでしょう? 宇宙連句づくりの可能性を、生徒たちの作品を手がかりに考えてみたいと思います。

 はじめに、以下の資料をご覧ください。

宇宙連句の作例と集計(276KB)

2018年5月の女川中学校での出前授業で生徒たちが紡いだ25の発句の中から、第2句をつけた北方中学校、瑞穂中学校の生徒たちはどの句を選んだのか、また、第3句(※1)をつけた女川中学校の生徒たちはどの句を選んだのかを集計しました。

※1 授業の冒頭で作品集(発句と第2句)を生徒に配り、お気に入りの連句を選んでもらいました。その後、いつものように、今の気持ちや考えなどを五・七・五で表現してもらいました。この句を生徒が気に入った連句(発句と第2句)につけた第3句としました。

すると、興味深いことに、多くの生徒が第2句と第3句をつけた上の句(大好評の上の句)が6句あることがわかりました。それらを引きます。

これからの  人生予報は  晴れがいい
午後の授業  夢の世界に  行ってきます
未完成  そんな僕らに  できること
世の中は  理不尽ばかりで  なんでやねん
この想い  叶わないまま  終わるかな
自分に言う  生きる理由を  考えろ!

なぜ、これらの句は多くの生徒をひきつけたのでしょう? 共通点は何でしょう?

いずれの句も思春期・成長期ならではの思い(悩み)、一人では答えを導けないような深い思い(悩み)が語られているように感じられます。そうした大いなる思い(悩み)を遠く離れた同世代の仲間たちへ問いかけてみたくなったのではないでしょうか? 宇宙的な感覚でしょうか?

また、なぜ、遠く離れた北方中学校や瑞穂中学校の多くの生徒がこれらの句を選び、付け句をしたのでしょう? 「私もその問い(悩み)と向き合っている……ともに悩みたい、考えたい、応援したい」などと考えたからではないでしょうか? 宇宙的な共感でしょうか?

このように、宇宙連句づくりをとおして、同じ宇宙を生きる中学生たちが、人生の中で向き合っている思い(悩み)を共有して、言葉でつながる様子が観察されます。宇宙連句づくりがもつ豊かな可能性を感じます。

実は、この豊かな可能性を8年前に教えてくれた人々がいます。東日本大震災直後に宇宙俳句を詠んだ女川中学校の生徒、その句に応えた国内外の人々です。これらの人々が共創した連句は、中学校国語教科書(光村図書)の「空を見上げて」(1年)で紹介しています。その力を、今を生きる女川中学校、北方中学校、瑞穂中学校の生徒が引き継いでくれたことが、本連載をとおしてわかりました。幸せな1年間でした。

女川中学校の3年生は、この春全員高校進学されたそうです。おめでとうございます。人生楽しいときもあれば辛いときもあるかもしれません。そんなときは星を眺めて、宇宙俳句、連句を思い出してください。きっと元気や勇気を分けてもらえると思います。

最後に想い出深い連句を引きます。

これからの  人生予報は  晴れがいい  (女川)
雨がふっても  みんながいるぜ  (北方)
女川町  単独町制  守り抜き  (女川)
夕日見て  今日の一日  思い出す  (女川)
あと何日  二組と過ごせる?  (瑞穂)
好きだった  君の俳句も  聴き納め  (女川)

山中勉(やまなか・つとむ)

1958年、東京都生まれ。宇宙航空システムエンジニア。(株)IHIエアロスペースにて宇宙航空事業や国際宇宙ステーション(ISS)の一般利用を発案し実証。宇宙航空研究開発機構(JAXA)主幹研究員、日本宇宙フォーラム主任研究員を経て、2013年より(株)IHIで社会貢献活動としてISSを利用した学校授業を共創している。
東日本大震災では宮城県女川町や各地の学校での出前授業を行い、五・七・五の言葉などの作品をISSに届ける活動を続けている。

みなさんの教室でも星に届ける言葉を紡ぎませんか?

宇宙俳句や連句を授業で創作し、電子データ(PDF)でお送りください。メモリーカードに収録のうえ、今年の夏ごろに打ち上げが計画されている「こうのとり」宇宙船8号機・H2Bロケットに搭載し、世界中から容易に目視できる星に打ち上げます。女川中学校、北方中学校、瑞穂中学校の生徒の作品とともに、生徒のコトバを星に届けるお手伝いをさせていただきます。国際宇宙ステーション、こうのとり宇宙船、H2Bロケットの製造に参加している(株)IHIの協力により無償で打上げます。星に届ける作品ならば何でも結構です。地球人の誓い、星への手紙も歓迎します。

受け付けはメールで行います。件名は「空を見上げて」とし、作品を添付のうえ、本文にメッセージ(任意)、必要事項(学校名、学校のご住所、担当者様のご連絡先)を記載し、下記アドレスにお送りください。

光村図書出版 第三編集部 広報課
E-Mail:koho@mitsumura-tosho.co.jp

※ 応募受付は締め切りました。 たくさんのご応募ありがとうございました。

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