みつむら web magazine

第2回 まちを楽しむ

みんなが楽しむ生活科

2019年8月9日 更新

田中 千草 元 京都市立桂徳小学校校長

毎日楽しく、魅力ある学校の中心になるような生活科実践のヒントをお届けします。

田中千草(たなか・ちぐさ)

横浜市生まれ。京都市内の公立小学校に勤務し、平成4年に生活科が教科化されて以来、積極的に実践・研究を重ねる。近畿地区小学校生活科・総合的な学習教育研究協議会会長などを歴任。令和2年度版光村図書「せいかつ」教科書編集委員。

生活科とまちの地図

先生 みなさんの家から学校までの道を、この画用紙に描いてみましょう。

子どもA わあ、難しい。

子どもB ええと……。信号のところを曲がるでしょ。

子どもC どっちに曲がるんだっけ。

教室はワイワイガヤガヤ。

子どもD 先生、紙が足りないのでもう1枚ください。

画用紙を縦に横につなげ、なんと4枚も使った子どももいます。
できあがった地図をみんなで見比べました。

子どもE あれ? 〇〇ちゃんと僕は同じマンションなのに道が違う!

そこで、校区の地図を描いた大きなシートを床いっぱいに広げ、空き箱で作った学校を置きました。子どもたちはシートの地図の上を歩き、自分の家の場所を確認します。
 

子どもが楽しむ「まちたんけん」

生活科における「まちたんけん」は、校区のどこに何があるかを調べたり、校区全体の様子を知ったりするのが目的ではありません。
いちばん大切なことは、自分とのかかわりでまちを探検することです。

大きな校区地図には、お気に入りの場所、お店、公園、駅、図書館などが増えていきます。

「私のお気に入りは○○ケーキ屋さんです。チョコレートケーキが大好きです。私の誕生日のとき、丸い大きなチョコレートケーキを買ってもらいました。」
「私のお気に入りは図書館です。図書館では、読みたい本を探してくれます。もしその本がなかったら『リクエスト』して、買ってもらうこともできます。」

このように、自分とのかかわりでまちをとらえた子どもたちの発言を広めることが大切です。さらに、このまちで生活している人、働いている人に目を向け、自分たちもこのまちの一員でよかったと実感できるまちたんけんでありたいものです。

先生が楽しむ「まちたんけん」

先生も長期休業などを利用して校区を探検しましょう。
ケーキ屋さんをのぞくと、「当店のシュークリームは9月下旬から販売を始めます」という看板。先生にとっても発見です。秋のまちたんけんで、子どもたちにもぜひ気付いてほしいところです。

歩き疲れたら喫茶店に入ってみましょう。店主の方が小学校の卒業生で、学校の昔の様子を聞くことができるかもしれません。

路地を入ったところに小さな工場。お漬物のにおいがします。百貨店でも販売されている有名なお漬物屋さんが見つかりました。

先生も「このまちの先生でよかった」と思えるよう、まちたんけんを楽しんでほしいものです。

―失敗談―
放課後、学校に1本の電話が入りました。近所のスーパーマーケットの店長さんからでした。「当店は小さなスーパーマーケットで通路が狭いです。そちらの学校のお子さんだと思いますが、通路に座り込んでメモしています。夕方で、お客さんも増えてきているので迷惑なのです」という内容でした。慌てて謝罪に行きました。事前に指導しておけばよかったと反省しましたが、子どもたちの探究心には拍手でした。

次回は、「秋を楽しむ」です。

Illustration: フジイイクコ

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