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給食アンサンブル

如月 かずさ

児童文学作家

いつもどおりの,けれど誰かにとっては特別な給食――やさしく胸に響くアンサンブルストーリー。

スペシャル対談「ぼくらの給食,みんなの給食」 如月かずさ×五十嵐大介 [後編]

給食をテーマに,中学生の揺れ動く心や変化を描いた連作短編集『給食アンサンブル』。この作品の作者である如月かずささんと,連載時より絵をご担当いただいている五十嵐大介さんによる対談を,2回にわたりお届けします。

後編は,『給食アンサンブル』のお話と絵に込められた秘密。

スペシャル対談「ぼくらの給食,みんなの給食」 如月かずさ×五十嵐大介 [前編]

画像,給食アンサンブル

読んで救われる,書いて救われる

――『給食アンサンブル』の6人の主人公には,それぞれに悩みや葛藤があります。五十嵐さんが,いちばん共感できたお話はどれでしたか?

五十嵐 第1話「七夕ゼリー」,美貴の話ですね。ぼく自身と美貴に共通点があるわけではないんですよ,お嬢様学校の出身でもないし(笑),転校したこともない。
でも,友達との行き違いとか後悔の思い,「自分はあの時こうできればよかったのに」という事が,美貴のエピソードではちゃんとしてくれていますよね。だから読んで,自分までが救われた感じがしました。素敵でした。

如月 ありがとうございます。

――第1話ということで,特に意識されたことなどがありましたか?

如月 そうですね。読者が話に入ってきやすいように,とは考えました。
でも,実は最初に思いついたのは,第5話にある「ミルメーク」だったんです。

五十嵐 そうなんですか。

如月 ただ,掲載が始まる号(「飛ぶ教室」46号)が夏の発売だったので,最初くらいは季節を合わせようという考えもあって,「七夕ゼリー」に。それと,「ミルメーク」の主人公・清野は頭がよい優等生という設定なので,距離を感じてしまう読者もいるかもしれないとも考えて,第1話は美貴がいいかなと。まあ,美貴の場合も特殊な環境ではあるんですけどね(笑)。

――「ミルメーク」の清野といえば,如月さんご自身は,清野のキャラクターに近いんですよね?

如月 清野と同じく勉強がわりと好きで,そのせいでクラスメイトとちょっと距離が空いちゃっているかなという感じでした。もちろん勉強ができて,友達がたくさんいるという人はいますから,勉強が云々というより,自分があまり友達作りに積極的じゃなかったのかなと思います。そのあたりの自分のエピソードを,清野の話に盛り込みました。

五十嵐 それはつまり,清野の話の中に,如月さん自身の「もう少しこうしておけばよかったなあ」という思いが入っていると?

如月 入っていますね。とはいえ,私は清野ほどいい子じゃなかったので,そこはフィクションですが(笑)。

画像,ABCスープ

誰でもない,みんな

如月 『給食アンサンブル』に描いていただいたカバーの絵。すごく目を引く,魅力のある絵で,思わず「ああっ」とため息が出ました。

――今回のカバー絵は,表裏の二人とも,実はお話の主人公ではないんですよね。

五十嵐 はい。この話を読んだときに,6話それぞれの話ではあるんだけど,みんなの話だなと思ったんです。つまり,読む人が自分に置き換えたり,自分のエピソードを思い浮かべたりできる話だと。そういう広がりがある,みんなの話だということを表したくて,6話の誰でもない子の顔をみんなの代表ということにして描きました。

如月 すごくいいです。

――また,口元をスプーンで隠すというのも,今回のポイントですね。

五十嵐 それぞれの心にある秘めた思いというのも,このお話のテーマでもあると感じて。また,このスプーンって,見方によってはマイクにも見えるかなあと。

如月 なるほど!

――口元にあるスプーンは,「言う」と「言わない」,揺れる両方の気持ちを意味しているんですね。

如月 主人公のそれぞれの姿も,本当にイメージぴったりで。連載時から,毎回,見た瞬間に「そう! この声だ」って思っていました。

五十嵐 声ですか?

如月 はい。私は話を書くとき,登場人物のビジュアルのイメージはぼんやりしているんですが,声のイメージだけは毎回きっちり決めているんです。その声が,五十嵐さんの絵と一致して嬉しくて。

五十嵐 それじゃ,書いているときは,セリフは音として聞こえているんですか?

如月 そうですね。よほどの決め所じゃない限り,セリフはキャラがしゃべってくれるので,それを書いていくだけです。

五十嵐 おもしろいですね。じゃあ,如月さんの作品を映像化するときには,声は?

如月 もうイメージはありますね(笑)。

画像,卒業メニュー クレープ

些細なものでも,変われるきっかけに

――では最後に,読者に向けて一言お願いします。

如月 小中学生の読者には,作品の中に出てきたメニューが,次に給食に出てくるのをちょっと楽しみにしていただけたらなと思いますし,大人の読者には,小学校や中学校で食べた給食を思い出しながら読んでもらえたらと思います。
そして,日々の給食のようなありふれた些細なものでも,なにかを変えるきっかけになるんだなということを,作品を通して感じてもらえたら嬉しいです。

五十嵐 「給食」は,学生時代は特に意識していないものだったけど,こうしてそれをテーマにした話を読んでみると,そのときには気づかなかった豊かさに気づけるので,面白いなと思います。何事も当事者だったりすると,意識して立ち止まることもなかったりしますが,読むことによって,ちょっと立ち止まってみたりとか,考えたりできるきっかけになりそうな気がします。素晴らしい作品だと思います。

如月かずさ(きさらぎ・かずさ)

1983年群馬県生まれ。児童文学作家。

五十嵐大介(いがらし・だいすけ)

1969年埼玉県生まれ。漫画家。

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『給食アンサンブル』