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質問9 「多面的・多角的に考える」って、どういうこと?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

「多面的・多角的に考える」を理解する際に、どうしても「多面的」とはどのように捉えたらよいのか、また「多角的」とはどのようなことなのかと、言葉を分けて分析的に理解したい気持ちが先に立ちます。しかし、このように使われている場合の「・」(中黒)は不即不離の関係を表すものであり、分けて考えるのではなく一体として捉えることが妥当です。

でも、そうとは理解していても学習指導要領に多用されているので、その捉え方が気になります。そこで、この文言を理解する手がかりとして、社会科での捉え方を参考にして検討してみたいと思います。社会科では、多面的・多角的を「多面的とは、歴史的事象を、政治的、経済的社会的、文化的といった様々な側面(多面性)から見て、捉えることであり、多角的とは歴史的事象を異なった立場から見る(多角的)ことである。」と捉えています。

社会科での例を参考にすると、多角的とは、それぞれの立場に立って考えるわけなので、道徳科における「多角的に考える」とは、教材中のそれぞれの人物の立場になり切って考えればよいことがわかります。これを多角的と捉えれば、納得のいくわかりやすい説明だと思います。では多面的とはどのように捉えればよいでしょうか。道徳における「面」といわれてもあまりピンときませんが、「面」で思い起こされるのは心理面とか倫理面の言葉です。一例を「はしのうえのおおかみ」で示します。おおかみが熊の後ろ姿を見て、親切を体現していくところで物語は終わりです。では、その後について「これからのおおかみさんは、どうなっていくかな?」や「これから先、みんなは幸せに暮らせるだろうか?」など、将来を見据えた発問をすることはいかがでしょうか。このことも多面的に捉えることになると考えられます。

冒頭で述べたように、基本的には「多面的に考える」、あるいは「多角的に考える」と分類するのではなく、あらゆる可能性を想定して総合的に考えていくことが大切だと思います。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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