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質問10 「現代的な課題」って、なに?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

「現代的な課題」とは、現代社会の中で生きていくうえで出会うさまざまな課題です。このような課題には、多くの道徳的価値が含まれています。

まず、学習指導要領解説では「現代的な課題」の具体的な例示として「食育、健康教育、消費者教育、防災教育、福祉に関する教育、法教育、社会参画に関する教育、伝統文化教育、国際理解教育、キャリア教育」などを挙げています。おそらく、これらの中には、これまでも学校全体で取り組んできた課題もあったと思われます。これらの課題に取り組む場合は、各教科等の学習と関連付けたり、課題を主題とした教材を活用したりして、さまざまな道徳的価値を学べるように工夫することが大切です。これらの学習を通して、人としてよりよく生きるうえで大切なものを学んでいくことが求められています。

そして、注目すべきことは、学習指導要領解説で、「現代的な課題」を「持続可能な発展」という視点から取り上げていることです。小学校では、「持続可能な発展を巡って」について、環境、貧困、人権、平和、開発などを挙げ、中学校では、「科学技術の発展に伴う生命倫理の問題や社会の持続可能な発展を巡って」について、生命や人権、自己決定、自然環境の保全、公正・公平、社会正義などの課題が例示されています。ここに挙げられた例示は、未来に生きる児童生徒にとって、不可避で切実な課題ばかりです。

では、これらの課題を道徳科で扱う場合、どのように授業展開をしていけばよいのでしょう。このような現代的課題は、答えが一つでない、一定のコンセンサスが得られていない、あるいは、多様な考え方や見方ができる場合が多いと思われます。よって、このような課題を使って授業を進めていく場合には、必然的に、他者と協働しながら考え、時には異なる意見にも耳を傾けながら、よりよい解決策や納得解を導き出すことになります。また、納得解が得られても、新たな知見等が得られれば、さらに、新たな課題が生ずることも考えられます。このように、「現代的な課題」の学習では、多様な見方や考え方があることを理解し、答えが定まっていない問題を多面的・多角的に考え続ける姿勢を育てることが大切だということです。その際、安易に結論を出したり、特定の見方や考え方に偏ったりしないようにすることが重要です。また、自分と異なる考えや立場についても理解を深められるよう配慮しなければなりません。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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