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質問12 「体験的な学習」って、なに?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

今回の学習指導要領改正では、「道徳的行為に関する体験的な学習」や「特別活動等における多様な実践活動や体験活動」を道徳科に生かしていくことが求められています。では、この体験的な学習をどのように道徳科に取り入れていったらよいのでしょうか。

まず、学校行事等で体験した事柄を導入や展開の部分に生かしていくことが考えられます。学校行事はそれ自体に固有のねらいを有していますが、ねらいの中には多くの道徳的価値を含んでいる場合が多いと思われます。児童生徒は体験を通して道徳的価値を実感していますので、これを道徳科に生かしていけばよいのです。例えば、児童生徒が運動会や合唱コンクール等で感じ取った役割と責任を果たすことの大切さを、導入の部分で想起します。すると、実感をもって道徳的価値を考えることができるので、道徳的価値の把握がしやすくなります。

「役割演技」や「動作化」を取り入れることも考えられます。役割演技は、即興的に演技をするので深層心理が表出されやすく、児童生徒の本音や実態が把握しやすいと思われます。動作化は、教材中の登場人物の動きを忠実にまねたり、一定の動きをしたりして実感的理解を深める方法です。例えば、礼儀について考える場合には、直立不動の姿勢から深々と頭を下げて明朗に「おはようございます。」と言う動作と、体をよじりながら頭をコツンとだけ下げて小声で「おはようございます。」と言う動作を体験して、感想を発表したりその様子を見て印象を話し合ったりするなどの活動が考えられます。

さらに、具体的な道徳的行為の場面を思い起こし、追体験する方法もあります。例えば、児童生徒が、見聞きし感じている道徳的行為の難しさを話し合ったり、逆に、見聞きしたすばらしい道徳的行為について発表し合ったりして、その意味を深めることが考えられます。

体験的な学習を道徳科に活用する場合に注意すべきことは、単に道徳的行為を想起したり道徳的行為の動作化を行ったりするだけにとどめないようにすることです。体験的な活動で学んだ内容から、道徳的価値の意義を深めるようにすることが重要です。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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