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質問18 道徳の授業開きって、どんな工夫をしたらいいの?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

「最初が肝腎」とよくいわれます。このことは道徳科の授業にも当てはまることであり、最初の授業(授業開き)で道徳科の魅力を十分に伝え、興味をもてるようにすることが大切です。そこで、道徳科の魅力を伝え、授業を充実させていくための授業開きの工夫について、二つの側面から考えてみましょう。

まず、道徳科の基本理念です。道徳科は、道徳的な問題について考え、自己の生き方や人間としての生き方を考えていくので、今の自分にとっても将来の自分にとっても大切な時間です。このことを児童生徒が納得できるように説明していくことが必要です。そして、算数や数学などのように定まった一つの解があるわけではないことや、生命倫理、環境倫理のような「現代的な課題」では、議論を交わして合意形成を図っていくことなどを説明し、真剣に考えたことや発言については、正誤は不問とし、認められるということを伝えていくことです。また、「共に考え、共に語る」ことからも、教師も児童生徒と一緒になって考えていく姿勢を示し、クラス全体で考え深めていくことの重要性も強調したいことです。これらのことを伝えることで、児童生徒は他の教科とは少し異なった感覚をもち、道徳科に興味・関心を抱くと思われます。

次は、学習を進めていくうえでのルールです。このことについては、担任の学級経営理念や持ち味を生かしていくことが大切だと思いますが、一般的に考えられることを幾つか挙げたいと思います。道徳科でも言語活動の充実が求められており、話し合いが重要となります。話し合いを活性化していくためにはルールが必要です。例えば、話し合いの基本原則として、自分の意見をしっかりと大きな声で述べる、相手が発言しているときは相手のほうを見て意見をしっかりと最後まで聞くなどを定めておけば、スムーズに進むでしょう。また、級友の意見に同意する場合は「サンセイ」、異なった意見には「ナルホド」、全く新しい視点での意見は「オー」と感嘆の声を発するなど、クラス内のルールを決めておけば、発言者も安心して発言でき、和やかに話し合いも進むと思います。これらのことは、一度だけの確認では徹底しない場合も多いと思われるので、必要に応じ、再度繰り返しながら、児童生徒に定着していくようにすることが大切です。また、他教科での授業でも同じルールで進められると効果的です。この他にも、ペアトークや少人数での話し合い活動の進め方について、道徳ノートの使い方について等々、教師が学習を進めていくうえでの創意工夫を凝らした授業方針の設定(授業作り)をすることで、より道徳科の魅力が伝わり充実した授業になっていくはずです。

以上のことは、道徳科の授業開きで説明するのがよいでしょう。もし、説明すべき内容が多く、授業の進行に影響があることが予想される場合は、紙面にまとめる等の工夫をして、授業開き前の朝夕の短学活等で説明をすることも考えられます。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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