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質問19 道徳の授業って、どうやって1時間を構成すればいいの?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

道徳科の1時間の指導過程は、一般的に、「導入、展開、終末」の各段階で構成されています。

導入は、学習する内容について、考える視点を明確にもてるようにすることがねらいです。この段階では、おおよそ二つの指導方法が考えられます。

一つは、本時のねらいとする道徳的価値に関わることを意図した導入方法です。具体例を挙げると、ねらいが「親切、思いやり」だとすれば「今まで、親切にされてうれしかったことはありますか?」「本当の親切とは?」のように、道徳的価値に関わる問いをすることで、本時で学ぶ道徳的価値に意識が向かうようにします。

もう一つは、教材の内容に関することについて問う方法です。具体例を、小学校低学年の教材「はしのうえのおおかみ」を使用した場合で考えてみましょう。この教材でのねらいは「親切、思いやり」で扱うことが多いと思われます。この教材の導入を道徳的価値に焦点を当てて考えると、前述のような方法が考えられますが、教材の物語の内容に焦点を当てて考えた場合は、「皆さんは、どんな動物が好きですか?」などと問います。そして、「じゃ、今日は皆さんの言ってくれた動物が登場するお話をします。一緒に考えていきましょう。」というふうに、展開部分へとつなげていきます。このように、導入の方法としては、授業でのねらいの道徳的価値に意識を向ける方法や教材の内容に誘う方法が考えられます。

展開は、これまで、通例的に展開部分を「展開前段」、「展開後段」の二つに分けて考えることがありました。学習指導要領に「展開」の文言は示されていますが、展開前段、展開後段の表記はありません。このようにあえて二つに分けて示してきた理由は、展開部分の前後で指導の内容が異なるので、指導過程をより明確化し、指導しやすくするためではないかと考えられます。展開前段では、教材を通して、主人公の言動や生き方から道徳的価値を追求し把握することをねらっています。主人公や教材で提起された道徳的問題に対して児童生徒の考えを表出させ、これらの考えを焦点化していく中で、ねらいに迫ります。そして、展開後段では、授業で学んだ道徳的価値の一般化を図ることをねらっています。教材の内容を離れ、授業で学んだ道徳的価値に照らして「これまでの自分の生き方はどうであったか」あるいは、「これからの自分はどうありたいか」について自己内対話をします。

そして、最後は終末です。終末では、展開後段で把握した道徳的価値の実践化への意欲向上を図ることをねらっています。具体的には、教師の説話、写真、新聞記事、DVDなどにより意欲化を図ることが考えられます。その際、留意すべきことが一つあります。国語や社会のような教科であれば、1時間の授業の最後にまとめをすることはとても大切です。しかし、道徳科の場合は「まとめ」という表記ではなく、「終末」です。教師が1時間のまとめをして、ねらいとする道徳的価値の押し付けにならないようにすることが重要です。

ただし、導入、展開、終末という構成の授業が全てということではありません。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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