すべての子どもたちが学びやすくなるよう、専門家の監修のもと、ユニバーサルデザインに対応し、紙面の構造化や誤解の生じにくいレイアウトを実現しました。支援が必要な子への配慮が、全員の学びやすさにつながります。
学習の中心を大きく、大切なことがひと目でわかるように
低学年では、単語や文節の途中で改行しないように
配置をパターン化して理解しやすく
挿絵に登場人物名を記載し、判別しやすく
初めて小文字を書く段階では、書くスペースが判別しやすいように4 線に着色
写真の上に載る文字も読みやすく
写真やイラストは、境目をわかりやすく
「多様性」に配慮するユニバーサルデザイン
「ユニバーサルデザイン(以下、UD)」とは「障害の有無にかかわらず、誰もが使いやすくする工夫」として工業製品などへの考え方からスタートしました。教育においてもこの考え方を取り入れる動きが広く起きるようになりました。
「誰もが」使う「教科書」は、当然UDの視点で作られなければなりません。学習につまずきのある子にとっては、色、フォント、ページ構成の配慮に留まらず、挿絵の意味、問われ方、説明内容など、もっと踏み込んだUDの工夫が必要になります。光村図書の教科書では、こうした工夫を紙面の細部に至るまで施し、結果的に「つまずき」だけでなく、「多様性」へと配慮した教科書となっています。
小貫悟(こぬき・さとる)
明星大学教授
専門は、LD・ADHD・高機能自閉症などへの援助技法の研究。日本LD学会常任理事、日本授業UD学会常任理事を務める。
全教科、全ページで、色覚特性ごとの色の見え方の検証を実施。使用する色の組み合わせはもちろん、形を変えたり、文字情報を加えたりなどの工夫をすみずみまで施しています。
どんな色覚特性の子どもでも、グラフなどを判別しやすいよう配慮
色文字でも、ルビは黒字で見やすさを優先
より多くの人に見分けやすい配色と表示で
図表は、色だけでなく記号、実線と点線を使い分けて
色を使用せず、マークと文言で
色を選ぶ活動では、色名を添えて
学習をCUDに配慮したものに
色覚にはいくつかのタイプがあります。そしてタイプには多数派と少数派がいて、例えば、「ある種の赤とある種の緑」「ある種の水色とある種のピンクと灰色」を混同するタイプの色覚特性(P型・D型)があるなど、それぞれ似て見える形が異なります。暖色の範囲・寒色の範囲などの色に対する感覚も違ってくるため、指導の際には配慮が必要です。
光村図書の教科書では、CUDの観点から、混同しやすい配色を避けることに加え、色だけでなく形や文字と合わせて判断できるようにしたり、色に関する表現が学習に支障を来さないようにしたりするなど、配慮して紙面が作られています。
市原恭代(いちはら・やすよ)
工学院大学准教授
専門は、色覚、カラーユニバーサルデザイン。NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)理事を務める。
学年によって発達段階に大きな差がある小学校では、1年生と6年生にとって、それぞれに求められる教科書の特性は異なります。光村図書では、判型・体裁をはじめ、使う書体の一つ一つに至るまで、その学年、その教科にふさわしいものになっているかを徹底的に吟味しています。
ランドセルの中身をなるべく軽く
幼稚園・保育所からの大きな環境の変化を経験する1年生。「初めて」のことばかりの1年生の学びには、余計な負担がかからないようにしてあげることが大切です。光村図書では、教材を精選することでページ数を抑え、教科書を軽くしています。
高学年は、見通しと振り返りを優先
高学年になると、1年間の学びの見通しをもち、前に学んだことを振り返りながら、自ら学習を進める姿が見られるようになります。そのような主体的な学びへ誘うために、光村図書「国語」では、高学年は学年一冊にしています。
教科特性に応じた判型
「書写」は、令和6年度版から横幅を5mm大きくし、半紙と同じ比率のB5 変型判。
「生活」は、写真やイラストを大きく掲載でき、一目で学習の見通しがつかみやすいA4 判。
文字のユニバーサルデザイン
低学年では、太教科書体を標準とすることで、児童が文字の形をはっきりと認識しやすくなるよう配慮。
文字が小さい箇所などには、見やすく読みまちがえにくいユニバーサルデザインフォントを採用。
発達段階に応じた文字の読みやすさを追究
みなさんは日常的に目にする文字を読んでいて、文字の形を捉えにくいとか、文字が揺れているようだなどといった感覚を覚えることや、文字からそんな感覚を受ける人がいることをご存じでしょうか。そこで開発されたのがUDフォントです。UDフォントは、従来の読みやすさを損なうことなく、読みにくいと感じる要素を取り除いたり低減したりしてデザインされたフォントです。
このフォントを教科書に採用することは、より多くの児童生徒の教科書へのアクセスを可能にします。さらに光村図書の教科書の文字は筆写する際の手本にできるよう、とめはねなどがわかりやすくなっていたり、画数を捉えやすくなっていたりします。また、発達段階を考慮し、低学年では太めの教科書体が用いられ、中学年以降では小さくなった文字でも読みやすいよう標準の教科書体が用いられています。
氏間和仁(うじま・かずひと)
広島大学大学院准教授
専門は、特別支援教育、視覚障害教育。日本弱視教育研究会理事、日本特殊教育学会編集委員を務める。
令和6年度からは、小中学校の英語で学習者用デジタル教科書が全校に導入されるなど、デジタル端末の活用が進みます。光村図書のデジタル教科書は、多彩なカスタマイズ機能により、さまざまな特性の子どもたちの頼もしい味方となります。すべての子どもたちにとって学びやすく、インクルーシブ教育を実現する道具としての活用が期待されています。
ハイライト表示をしながら読み上げ
再生速度の調節
文字の色やサイズ、背景色をカスタマイズ
「ふせん」機能
すべての漢字に振り仮名を表示できる
「スクロール」モードで、ページをめくらずに読むことが可能に
すべての子どもの学びをスムーズに
デジタル教科書でも、紙の教科書のUDを継承しています。加えて、本ページで紹介しているデジタルならではの機能によって、教科書を用いながら認知し思考し表現する学びを、すべての子どもがスムーズに進められるよう配慮しています。特に国語における文に沿ってきれいに線が引ける機能や、英語における英語の単語や文をクリックするだけで読み上げてくれる機能は、主体的・対話的な学びへのシフトを手助けします。
また、視聴覚特性等による個別ニーズのために、さまざまなカスタマイズ機能を設けました。紙の教科書では拡大教科書のような固定的にカスタマイズされたものを一部の子どもが使っていますが、デジタル教科書ではすべての子どもが特性に合わせて自由にカスタマイズでき、個別最適な学びを支える頼もしいツールになります。
加藤直樹(かとう・なおき)
東京学芸大学教授
専門は、情報工学。教育の情報化に関する研究に従事。「AI時代の教育学会」理事を務める。