美術の評価 Q&A 【第1回】 Q. 休業期間、どう評価したら?

2020年7月1日公開

実践女子大学特任教授 中村一哉

A. どんな場合でも評価の基本は変わりません。まずは何を育成するかを明確にしましょう!

コロナ禍による休業が昨年度末から長期間続き、その間の生徒の学習の対応に、誰もが苦労をしていることでしょう。休業中の生徒に課題を出し、それを1学期の評価とすることも、多くの学校で考えられていると思います。

その場合、学校の再開とともに課題を回収し、さて、その評価をどうするかは誰もが悩むところです。もちろん学校によって、休業中の対応はさまざまで、テレビ会議システムを活用して授業を共有する学校もあれば、メディア授業で、制作の課題提示と説明を通信ソフトで行って作品を回収するなど、授業形態によっても評価のあり方は違ってくると思います。

しかし、どのような場合であっても、評価の在り方が基本的に変わることはありません。

基本に立ち返って考えてみましょう。まず、学習の評価はねらいに即して、指導した学習内容がどこまで実現できたかを判断し、生徒に伝えて改善を図るためのものです。評価自体は、学習状況を観点別に把握し、移行措置期間である本年度は、原則として従来の4観点で評価していくことになります。

従って、美術科の評価は作品の出来栄えのみで行うものではなく、表現や鑑賞の学習過程で、生徒が観点に示された資質・能力を、どれだけ伸ばしたかを捉えて評価することになります。表現であれば、発想を豊かに膨らませて、それを表現するための構想をどのように工夫しているか、また、それを基に作品の制作過程で、習得した技能を生かしたり、創意工夫したりしながら自分らしい表現を生み出しているかを評価していくことになります。

そこで重要になるのが、課題を設定する際に、題材(この場合には家庭学習の課題)を通して、どのような資質・能力(各観点の内容)を育成するのか、その視点が明確であることです。

そのことを踏まえて、次の2つが評価の方法として考えられるのではないかと思います。

(1) 家庭での課題学習の場合には、制作過程を教師が把握することが困難であることから、ワークシートや感想等の生徒自身の記述などから学習の過程を把握し、作品との相関を基に評価するようにする。

(2) 休業中の課題を再開後の題材と関連付けて、家庭での取り組みが以後の作品制作の中で生かせるような場面を設定し、題材相互の関係を把握しながら年間を通した観点別の評価を行うようにする。

いずれにしても、評価は計画的に行うことが前提です。課題を通して生徒にどのような力を育成するのか、その視点に立って、何を評価するのか、どのように評価するのかを考えるようにしましょう。

中村 一哉(なかむら・かずや)

東京都生まれ。実践女子大学特任教授。多摩美術大学卒業後、東京都の公立中学校教諭、東京都の教育行政職を経て、府中市立府中第五中学校長を務める。中央教育審議会「芸術ワーキンググループ」委員。光村図書中学校「美術」教科書の著作者。

Illustration: ひこ

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