リモート授業、どう行うの?【第1回】 リモートだからこそできる授業とは(準備編)

2020年6月23日公開

北海道教育大学附属釧路中学校教諭 更科結希

「まさか、リモート授業をすることになるとは……。」

私の勤務校は、複数台のタブレット端末が導入されていましたが、すぐにリモート授業ができる体制にはありませんでした。しかし長期化するかもしれない臨時休業を目の前にし、生徒たちの学びを止めないために、リモート授業への舵を切りました。

リモート授業を実現するために、生徒への指導や先生方への研修、システムの構築など、整備をする側に携わりながら(※)、美術の授業を実際に展開してきた経過とポストコロナを意識して取り組んだ1か月をご紹介していきます。

※ 筆者が作成した勤務校のリモート授業に至る経緯

環境を整えるところから始まりました

私の勤務している釧路では、2度の長期にわたる臨時休業がありました。2月から3月末の最初の臨時休業時は、美術科では学校のホームページに掲示板アプリのpadletを用いたページを開設し、生徒たちとやりとりをしてきました。その時は、授業を展開するというよりも、普段の授業では紹介しきれないサイトや作品に目を向けるための資料を提供するにとどまっていました。

 4月、入学式を終えた後、再び臨時休業となりました。わずか2週間弱で、リモート授業に向けての準備を進めました。ビデオ会議用アプリのZoomを使い双方向のやりとりを実現させ、教師の資料提示や生徒がアウトプットしたものを回収できる、授業支援ツールのロイロノートを導入しました。そして、クラウド型グループウェアG suite for Educationの登録を進め、さまざまなアプリを用いて授業展開ができるようにしました。約1か月半にわたった休業期間中の時間割は1日3時間(最大4時間)で設定し、美術科も各クラスで授業を展開することになりました。

リモートだからできること

「どうやってリモートで美術の授業をやったらいいだろう……」、「一斉に素材を触り、表現することはできない」、「生徒を見取り、きめ細やかな個別指導はできない」。できないことを探せばいくらでも出てきます。一方、これまで構想していて実現していなかった「オンライン上で生徒の意見を共有し、共同制作ができたらいいな……」が実現できるチャンスでもありました。

そこで美術科では、いつもと同じ授業を展開するのではなく、ポストコロナを見据えて「リモートだからできること」を増やしていこうと画策しました。その際に、リモート授業で大切にしようとしたことは以下の二つです。

① 生徒たちが家にいるからこそ、できる展開を意識する。
② インプットよりもアウトプットが多くなるように授業を構成する。

平常時との違いを意識して

リモート授業を展開するにあたり、最初に行ったのは年間指導計画の組み替えです。臨時の課題を設定することも可能でしたが、いつまで休業期間が続くかわからない状況下で、リモート授業だからこそ展開できる題材を選びました。

そして、題材の導入から構想するまでの授業展開を考えていきました。例えば2年生では「オノマトペのイメージを形に」という全5時間の表現題材を実施しました(図1)。自分が読んでいる本のお気に入りの場面をオノマトペ化し、本の栞としてあらわすという授業です。今までも朝読書と関連させて行ってきた授業ですが、リモート授業では生活音に着目させられるような学習課題に変更し、実践することにしました。

図1 「オノマトペのイメージを形に」における平常時の授業とリモート授業の違い

授業の導入はzoomで行い、生徒がアウトプットしたものはロイロノートを使って見取りました。図2は、授業の導入を行った際のロイロノートの画面です。「からっから」というオノマトペを想像させるような写真を家の中で撮影して、クラウドにアップするよう課題を出したところ、植木鉢からタオルまでさまざまな写真が集まりました。平常時の授業ではワークシートや資料を用いて生徒の発想を膨らませていますが、リモート授業では生徒が家の中にあるものや環境を用いて発想できるように意識しました。

図2 生徒が撮影した、「からっから」というオノマトペを想像できる写真

先日、休業が解除となり実際の栞の制作は学校で行いました。(図3)
「サラサラ」というオノマトペを栞にした生徒は、「自分が絵を描いているときに聞こえてくる音をオノマトペにしました。ひらがなとカタカナを組み合わせてなるべく細い字体にすることで、鉛筆と画用紙が擦れる音を表現しました」と、制作の意図を書いて提出してくれました。

図3 完成作品

また3年生では、オンライン上で意見を共有できるアプリを使用し鑑賞授業にも挑戦しようと画策しました。次回は、3年生での実際の授業についてご紹介していきます。

更科 結希(さらしな・ゆき)

北海道生まれ。北海道教育大学附属釧路中学校教諭。北海道教育大学卒業後、北海道釧路町の公立中学校教諭を経て、2012年4月より現職。北海道教育大学大学院修了。現在、研究主題「創造活動の価値を見出すことができる児童・生徒の育成」の実現に向けて、日々授業研究を行っている。


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