Writingでコミュニケーション
2020年6月18日公開
獨協埼玉中学高等学校教諭 杉内光成
現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、「対面での会話活動」や「大人数で大きな声を出す活動」を控えるよう呼びかけられています。このような状況下におけるコミュニケーション活動として、ライティングを効果的に活用するのはどうでしょうか。
これからご紹介する「ライティング回し読み」は、普段の授業にも取り入れている活動ですが、コロナ禍におけるコミュニケーションを意識した活動としておすすめできるものです。生徒自身が「書きたい」と思えるような指導のポイントとともにお伝えしたいと思います。
ライティング回し読み
生徒は、自身の英作文を、できるだけ多くの人に見てもらい、さまざまな意見をもらうことで、多くのことを学ぶことができます。そこで、クラスメイトに読んでもらい、アドバイスをもらうという活動を設定しました。あらかじめさまざまなルールを決めておくと、活動のポイントがより明確になり、学んだことの定着度を高めることができます。
『COLUMBUS 21』1年の「Go for It! 1 自己紹介をしよう」(54~55ページ)を例に、活動の流れと指導ポイントをご紹介します。
『COLUMBUS 21』1年 p54‐55
書くときの3つのルール
ここでの目的は、自己紹介をすることですが、私は以下の3つのルールを生徒に意識させるようにしています。
- 誰に伝えるか
- 何を伝えるか
- どのように伝えるか
まず、「(1) 誰に伝えるか」ですが、授業中に行う活動なので、「クラスメイト」を読者対象とします。事前に生徒には「書いた英作文は、クラスメイトに読んでもらいます。クラスメイトにあてて書き、そして読んでもらうことを意識してくださいね」などと声掛けをしておきます。
次に「(2) 何を伝えるか」についてです。教科書には、名前、ニックネーム、好きなこと、好きなことに付け加える情報などがあげられていますが、このほかに、誕生日・部活動・血液型・得意教科など、何でも自由に付け加えてもよいことにします。そうすると、生徒たちは小学校時代から学んできた表現を使って、オリジナリティーを出そうと、さまざまな工夫をしてきます。
最後に「(3) どのように伝えるか」では、「構成」と「表現」について、生徒に具体例を示しながら伝えていきます。
例) I like music. For example, I play the violin every day.
【構成】 例文のように、具体的なことをどんどん付け加える。
【表現】 好きなことを言いたいときは、I like〜.を使う、具体例を付け加えるときは、For exampleを使う。
(「最低限使ってほしい表現」を提示しておく)
こうすることで、学んでほしい表現が使えているかどうかを確認することもできますし、生徒もその表現を何回も目にするので記憶に残ります。
友達の英作文へのコメントのつけかた
ただ書かせるだけでなく、生徒たちがお互いにコメントをするとき、良い点と改善点をそれぞれ一つずつ出すように指示を出します。そうすることで、自身の英作文に対するコメントを読みたいという気持ちを高めることができます。私は以下のような簡易式のワークシートを使っています。


※いちばん上の段には、トピックについて書かせます。ここでは、Self Introductionなどになります。
コメントは、各自に役割をもたせることで、ポイントを絞ります。例えば、1回目に読む人には「内容」、2回目に読む人には「構成」、そして3回目に読む人には「文法、単語」を意識して読んでもらいます。ポイントを絞ることで、より具体的なコメントを残すことができます。以下がコメントの例です。
【Contents】
・〇〇が好きだなんて知らなかった!
・もっと趣味について知りたい!
【Structure】
・教科書の例の通りにキチンと順番通り書けています。
【Expressions】
・very muchの使い方が分かった。
・スペルミスに気をつけよう!
なお、コメントをする際はNameの欄に自分の名前を書いてもらいます。これは、自分のコメントに対して責任をもってもらうためです。また、アドバイスを参考にしながら、英作文に加筆修正をして、清書用のプリントにブラッシュアップした英作文を書きます。そうすることで、英作文を書いた生徒は、自身では気付くことのできなかった点について考えるようになります。さらに、回し読みをすることで、他の人のアドバイスを読むことができるので、「そんなこともあるのか」などと学び合いの効果も期待できます。これらの活動では、声を出さなくても十分に意見を交換することができます。
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「ライティング回し読み」は、音声を介さないで気持ちを伝えることのできるコミュニケーション活動です。「誰に」「何を」「どうやって」伝えるかを常に意識させることで、内容が充実します。コロナ禍においても、生徒どうし、そして教師と生徒もきずなをより強め、学び合いが充実するような環境をつくっていきたいと思っています。
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