コロナ禍における評価と見取りQ&A

2020年6月29日公開

コロナ禍の影響が残る今学期、評価や見取りに関するお悩みはないでしょうか。
太田洋先生(東京家政大学教授)が、中学校の現場の状況に寄り添いながらお答えします。

Q1 休校期間中の課題は、どの程度評価の対象とするべきでしょうか。

Q2 1学期の期末テスト作成にあたり、配慮すべき点はあるでしょうか。

Q3 授業中の生徒の様子がわかりにくいのですが、学習状況を見取る方法はないでしょうか。


Q1 休校期間中の課題は、どの程度評価の対象とするべきでしょうか。

A1 

この問いにお答えする前に、まず、読者のみなさんに確認したいことがあります。

いま、頭の中に思い浮かべているのは、「評価(観点別評価)」でしょうか、それとも「評定」でしょうか。

「評価(観点別評価)」と「評定」を混同してしまうことがあるので、その点を区別しながらお答えしましょう。

「観点別評価」とは、本来、指導と一体となって行うべきものです。生徒がどこまで理解できているのか、現状を分析・評価して、これからの指導に生かすことが大切です。例えば、休校明けに、課題の確認テストを実施したとします。それによって、不十分な分野がわかったのであれば、今後の授業の中で復習する機会を設けましょう。

休校中の課題は、これからの指導を見直すための材料になるのであれば、評価の対象として活用すべきでしょう。

では、「評定」に反映してよいものでしょうか。一概にはいえませんが、基本的には数値化する必要はないと思います。入れるとしたら、取り組んだことに対する加点といったところでしょうか。家庭学習の場合、生徒の取り組み方やプロセスを完全に把握することはできません。提出されたプリントだけを見て、生徒の理解度を知ることは難しいといえます。ですから、判断基準はとてもシンプルなものになります。生徒が課題に取り組んだか、取り組んでいないか、そこが加点するかどうかの基準になると思います。

休校中の課題を「評定」に入れるか否かよりも、今後の指導にどう生かすかといった点をぜひ考えていきましょう。

Q2 十分な指導ができないまま、1学期の期末テストを実施することになりそうです。テスト作成にあたり、配慮すべき点はあるでしょうか。

A2

このような不測の事態の中、例年どおりの指導ができないのは当然のことです。指導が不十分というよりも、指導できる期間が単に短かったのですから、その範囲でテストを実施すればよいわけです。

定期テストは、基本的にアチーブメントテストという位置づけのものです。教師が教えたことを、生徒がどのくらい理解できているか、達成できているかを確かめるために行います。

例えば、現在完了形を理解するところまでは授業で扱ったとします。しかし、話したり書いたりするなどのアウトプットの時間はとれなかった場合、定期テストでも、理解できるかどうかだけを問うべきでしょう。

定期テストには、指導者のねらいがあるはずです。6・7月の2か月の間に指導したことと、テストのねらいが一致しているのであれば、どんな問題を作成してもかまわないと思います。そして、あくまでも、指導した内容を理解・達成できているかどうかが評価のポイントとなり、評定にも反映されます。

Q3 通常のような机間指導ができない状況です。マスクによって生徒の様子もわかりにくいのですが、学習状況を見取る方法はないでしょうか。

A3

「声」による見取りは、難しい状況かと思います。では、手段を変えて、ライティングで見取ってはどうでしょうか。コメントを書かせたり、生徒に紙やホワイトボードを持たせて、それを掲げたりするといった方法もあります。

なお、現行学習指導要領に照らし合わせて考えると、「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」の評価の観点は、次の2つとなっています。

・言語活動に積極的に取り組んでいる

・継続しようとしている

マスク越しで「声」は聞き取りにくくても、「積極的に取り組んでいるか」「継続しようとしているか」といった点は、十分見取ることができるでしょう。

ペアワークに関する悩みもあるかと思いますが、例えば、2メートルくらい離れて会話をしてみる、クリアファイルのようなもので口元をカバーしてみるなど、100%の言語活動を目ざすのではなく、代用の活動を楽しむことが大切だと思います。

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最後にもう1点、ぜひお伝えしたいことがあります。

学校が再開して1か月ほどになりますが、子どもたちの様子はいかがでしょうか。「友達といっしょに授業ができて嬉しい」「普段どおりに生活できるってありがたい」。そんな思いをもっているとしたら、それだけでもう十分ではないでしょうか。今は、とにかく安心・安全に過ごすことが第一です。生徒だけでなく、先生方の健康があっての学校生活です。

英語の授業ができる喜びを生徒と分かち合いながら、やれる範囲のことをやって、2学期に備えていってはどうでしょうか。

子どもたちのために不断の努力をされている先生方に、熱いエールを送りたいと思います。

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