臨時休業中の学習に「成功した生徒」「失敗した生徒」 【第1回】

2020年8月7日公開

広島県福山市立福山中・高等学校教諭  上山晋平

臨時休業中(4~5月)の生徒は、実際はどのような学習状態だったのでしょうか。それを把握するために、休校が明けて最初の英語の授業(6月第一週)で、休校中の学習についてのアンケート(自由記述式)を実施しました。目的は生徒の学習状況の把握(失敗・成功)と、今後の対策を考えることです。

アンケート結果をまとめる中で、これは生徒の学習状況の把握に使えるだけではなく、今後の長期休暇の学習や長期的な受験勉強にも役立てることがあると感じました。また、アンケートの対象は高校2年生だったのですが、その回答内容は、中学生の英語学習にも大いに参考になると考え、本コーナーでご紹介することにしました。

アンケートでは、次の3項目を生徒にたずねました。

【対象】高校2年生(120名)

  1. 休校中の学習での「成功」例は?(効果のあったもの)
  2. 休校中の学習での「失敗」やその原因は?(あれば)
  3. 不安なこと・聞いてみたいことは?
※回答する際は、英語を中心にしながら、英語以外の科目に触れてもよいとした。
※本校は「スタディサプリ」というシステムを導入しており、生徒は家庭で授業動画を自由に見られる環境。休業期間中、教科ごとのオンライン授業は行っておらず、YouTubeなどでの解説動画配信は理数系の一部教科では実施。

まずは「成功例」からご紹介したいと思います。

【成功例】工夫して効果のあった学習法(英語以外も含む)

休校中には、部分的にでも学習が「うまくいった」という成功体験を積んだ生徒もいます。彼らの記述を分類すると、以下の15個に分けることができました。これらは実際の高校生が実施してうまくいった方法であり、中学生は試してみる価値があるかもしれません。ただし、かなりユニークな学習法もあり、人によって合うものは異なるので、すべてまねをするではなく、自分の性格に合うものがあれば取り入れる、という考え方がよいでしょう。

以下は、回答の一部を抜粋したものです。回答の詳細は、PDFファイルをご参照ください。 

(1)「学習内容」をリストアップする(決めておく、机に出しておく)

  • 前日にやることを細かく付箋に書いて、机に貼っておく。
  • その日にやるべきことを紙に書きだしてチェックリストにして、終わったらチェックマークを入れて、1日の終わりに全部チェックが入っているようにした。チェックがうまると頑張ろうと思える。
  • その日にやることを決めて、早く終わらせてからダラダラする。

(2)「学習時間」や「開始時刻」を決める(時間割、休憩時間、時刻の固定、集中時間)

  • 前日に「明日は何時から勉強を始めるか」を決めておいて、その時間にアラームを設定する。アラームが鳴ったら、そのとき何をしていても勉強机に座って20分間はやってみる。(1回始めると意外と集中できる)
  • 昼夜逆転勉強法。家族が活動していない夜は、昼の5倍集中できる。母「勉強しなさい!」自分「今しようと思っていた」を未然に防ぐことができる。

(3)「学習環境」を整える(机の上、部屋)

  • 気が散らないように、机の周りに教科の物以外を置かずに学習する。(物を探すこともなくなる)
  • 自分の部屋での勉強は集中できないので、リビングで行った。そのときは、課題を一つだけリビングに持っていき、今日やるところまでが終わったら自分の部屋に片づけて、また部屋から取り出してくるのを繰り返した。(自分の部屋が2階にあり、休憩がてらに階段の上り下りをするとよい運動になる)

(4)学習の「目的や目標」を決める

  • 「勉強したぶんだけ、将来お金持ちになれる!」と思って頑張った。
  • 勉強した時間分だけスマホやテレビを見る。しなかったら見ない。

(5)成功の「ご褒美」を決めておく

  • 宿題の範囲ごとに、事前にご褒美を決めて進める。
  • 「英語表現のワークが終わったら、○○○のテレビを見る」と決める。

(6)学習を「継続」する工夫をする(学習時間の記録など)

  • 1日の勉強時間や教科を毎回アプリに記録する。(グラフ化してくれるので、できた日とできていない日が一目でわかる)
  • 「集中」というアプリで、何分以内に何を終わらせるかを決めて効率よく勉強した。
  • To do リスト(通知あり)のアプリで、タスク処理した。

(7)「学習動画」を活用する(ネットやアプリなどの活用)

  • YouTubeで、できるだけ外国人の動画を見た。耳が少しだけ英語に慣れた気がする。
  • 文構造など受験英語がたくさん出てくるディズニー映画を英語で見て、どのような場面で使われているかの確認と聞き取りをした。

(8)「他者の力」を借りる

  • 友達とリモート勉強会を開催した。
  • 妹にわかりやすいように教えたら、ちょっとできた。

(9)飽きないように「気分転換」する

  • 休憩時間を10分間にして、うち3分はゲーム、7分は瞑想にすると切り替えることができた。(たまに休憩が長くなってしまった)
  • 「2時間勉強したら外に出てランニング」を繰り返す。

(10)毎日の「振り返り」をする

  • その日にあった出来事(良いことも悪いことも)や、学習した内容を書き出し、「次の日は~をしたい」というのを日記に書く。

(11)学習習慣をつける(毎日少しずつする、簡単なものから始めるなど)

  • 勉強する順番を決めて、いつも同じ順番でする。(例)リスニング→教科書→夜は単語など
  • 簡単なものからやる。(ワークの左側の単語だけ1レッスン分終わらせるなど)

(12)やる気があるときに、好きな教科から進める

  • 予定にとらわれず、やる気があるときにできるだけ進める。(やる気がないときはやめる)
  • 筋トレをして、テンションが上がった状態で勉強する。

(13)難しい問題に対応する

  • 演習をするときは、わからなかったところだけでなく、自信がない問題も印をつけて復習した。
  • 基本からできていなかったので、中学の頃に使っていた練習問題集を使うと、けっこうわかりやすく、よい復習になった。

(14)4技能の学習法を工夫する

  • 日本語訳を別の紙に自力で書いてみた。(文のつくりがわかってよかった)
  • 英語の本文CDを聞きながら学習を進め、聞き取れなかったら巻き戻し、単語を正しく発音できるまで聞いた。

(15)暗記のやり方を工夫する

  • 午前中に頭を使うもの、午後や寝る前に暗記系だと集中しやすい。
  • 寝る前に1日10単語覚えて、次の日の朝にその10単語を復習して、その日の新しい10単語を覚える。
  • わからない単語があれば、すぐに辞書で調べずに、まずGoogle画像検索をして、だいたいの意味を予測して、イメージを頭に入れてから単語を覚えた。発音も繰り返しした。

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これらの「成功例」のいっぽう、多くの「失敗例」や「休校中に不安だったこと」も寄せられました。しかし、逆に考えると、この「失敗の原因」(課題)や「不安」をどう乗り越えればよいのか、対策(解決策)を打てると、今後の長期休暇中や受験のための長期的な学習に成功する秘訣が得られるかもしれません。

以下は、「失敗例」「不安だったこと」の回答の一部です。次回はその対応策についてお伝えしたいと思います。

「失敗例」および「不安だったこと」

  • 学習計画を立てられない。または、計画を立ててもそれが具体的ではない。
  • 生活習慣や学習環境に問題がある。
  • 勉強へのやる気が出ない、集中できない。
  • リスニングの学習のしかたに不安がある。

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