生活科実践アイディア 横浜市立池上小学校の取り組み①
感染予防をしながらの友達づくり・居場所づくり
2020年7月3日公開
横浜市立池上小学校校長 寳來生志子
合言葉「にじをかけよう!」
緊急事態宣言が解除され分散登校が始まり、子どもたちの元気な声が学校に戻ってきました。子どもたちの笑顔に会えて、たくさんの元気をもらっている先生方も多いのではないでしょうか。
子どもたちも、友達や先生との生活を楽しみにしていたと思います。その反面、不安な気持ちの子どももいると思います。子どもたち一人ひとりに寄り添い、学校が安心できる居場所になるよう、教職員みんなで力を合わせていくことが大切です。「不安なことや困ったことがあるときは、いつでも聞きますよ」という姿勢を保護者に伝えるとよいでしょう。
新型コロナウィルス感染拡大予防のため「密閉」「密集」「密接」を避けることが求められています。
子どもたちは、夢中になると、ついつい距離が近くなってしまうのではないかと思います。そのたびに、「近いよ」「離れて」と注意するのでは、子どもたちも私たち大人も良い気分ではありません。もっと前向きになれる言葉はないかと教職員みんなで考えました。
「『にじをかけよう』はどうだろう」
この合言葉は、休校中の取り組みの中から生まれました。
休校中、朝会の話をメール配信していたのですが、「ニジノエール」というプロジェクトを紹介したことがありました。
・私たちの生活と健康を守るために、今日も働く人たちにエールを!
・感染を広げない為に、お家で過ごしているひとりひとりにエールを!
またお出かけできる日のために、にじを作ったり、歌ったりして、楽しいおうち時間を過ごそうというプロジェクト
学校が再開したら、みんなで「にじ(作詞 新沢としひこ/作曲 中川ひろたか)」を歌いたいねとも伝えていました。
また、「みんなと学校をつなぐかけはしになったらいいな」という願いを込めて、休校中に子どもたちから手紙や写真を送ってもらい、先生たちがお返事を書く「にじのポスト」という取り組みもしていました。
「お互いの腕をのばしてにじをつくれば、ソーシャルディスタンスが保てるのではないかな。」
こんなふうにして「にじをかけよう」の合言葉が決まりました。
距離が近くなってしまったときには、
「にじをかけてね!」「レインボー!」などと声かけをしています。
心と心をつなぎながら、社会的な距離は保つ。「心にも距離にも『にじをかけよう!』」を是非、合言葉にしてほしいと保護者や地域の皆様にもお願いしています。
1年生の担任が書いたポスター
「ベストスマイルタイム」の実施
横浜市では、学校再開にあたり、子どもたちのだれもが、安心して学校生活をスタートできるように「学校再開スタートプログラム」を実施しています。
以下の2つの視点で、再開後の1~2週間を目安に、朝や学級活動の時間を使って行う活動です。
子どもたちの心のケア
(自己のストレスに気づく、相手に受け入れてもらえる感覚を得る等)
人との関わりづくり
(自己を表現する、一体感を感じる等)
本校では、学校教育目標である「自分の思いや願いを実現してベストスマイル」にちなんで「ベストスマイルタイム」という名前で朝の時間に位置付けています。
ベストスマイルタイム
①手洗い・うがい
②健康観察
③ミニ活動
活動を通して、子どもたちが安心して学校生活をスタートし、徐々に新しい仲間とつながっていけるよう支援しています。学年に応じて活動は異なりますが、例えば、心のケアとして「心が落ち着く 呼吸のしかた」や、人との関わりづくりでは「パチパチリレー(※1)」など、ソーシャルディスタンスに気を付けながら取り組んでいます。
「ベストスマイルタイム」の実施を通して、相手に受け入れてもらえることを実感したり、みんなと一体感を感じる体験を重ねたりすることができるよう、温かな雰囲気に包まれた風土づくりを丁寧に進めているところです。
※1……スタートの人を決めて、順番に拍手する。全員が拍手するまでのタイムをどのくらい短くできるか、みんなでチャレンジする活動。

寳來生志子(ほうらい・きしこ)
横浜市立池上小学校校長
横浜市の公立小学校勤務ののち、平成24~28年には、横浜市こども青少年局担当課長として、スタートカリキュラム推進を担う。平成29年より現職。同校では、入学して間もない1年生の学校生活の様子を積極的に授業公開するなど、スタートカリキュラムのあり方を全国に発信している。著書に、『育ちと学びを豊かにつなぐ 小学1年 スタートカリキュラム&活動アイデア』(明治図書出版/共著)などがある。
「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 生活編」作成協力者、「発達や学びをつなぐスタートカリキュラム」(文部科学省・国立教育政策研究所 編著)作成協力者、NHK Eテレ「おばけの学校たんけんだん」「すたあと」の制作協力などにも携わる。