写真評論家 タカザワケンジが選んだこの1点

「酷暑」

「酷暑」 画像
カラー写真/57×48cm/富山県、2年

作者の言葉

この作品は、その年の暑さを表した作品です。暑さを表現するために、あえてモノクロにし、けだるさを表現しました。横断歩道のようにも見える場所で撮影し、現実とは思えないイメージの作品にすることができました。

私が選んだ理由

「酷暑のイメージを裏切る作品」

見た瞬間にドキっとしました。人間が3体モノのようにぶら下げられています。タイトルの「酷暑」を見て、なるほどと思いました。このまま干物になってしまいそう。ですが、ストレートに暑さを表現していないところが、この作品の魅力です。暑さを表現するなら、夏の日差しから連想する黄色や赤、強い光を使いそうなものです。しかしこの作品の作者は、あえて緑に傾いたモノトーンを選んでいて、鑑賞者が抱いている酷暑のイメージを裏切ります。酷暑という辛い現実を、サングラス越しに静かに観察しているかのようです。まさしくCOOL! 冷静に画面を見ると、地面の縞模様とそこに落ちる影のグラフィカルなリズムが、見る喜びをつくりだしていることに気づきます。モホリ=ナジやロトチェンコのような20世紀前半に活躍した写真作家たちの作品にも通じるセンスを感じました。酷暑がもたらした厳しい現実を、斜めにずらした視点で表現した、皮肉なユーモアが見事です。

タカザワケンジ 画像

タカザワケンジ

1968年群馬県生まれ。写真評論家。光村図書高等学校『美術』教科書の編集委員。

2025年6月4日公開

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