感染予防に配慮したコミュニケーション活動 ―ALTとのティームティーチングによる授業展開の工夫

2020年11月10日公開

執筆:株式会社ボーダーリンク

株式会社ボーダーリンクは、全国の公立小中学校を中心に外国語指導助手(ALT)を派遣し、派遣業務だけではなく、国際交流イベント・スピーチコンテストなどさまざまな角度から日本の英語教育のお手伝いを実施している会社です。この4月からは新型コロナウイルスの影響で、授業が休校する日々が続きました。その間、学校の先生方を少しでもサポートできないかと考え、在籍するALTとともに感染症予防に配慮した活動のあり方を検討してきました。

ここでは弊社が策定した「感染予防に配慮した活動 基本方針」をもとに、コロナ禍でのコミュニケーション活動についてALTとのティームティーチング(TT)での工夫をご紹介いたします。TTでの活用を想定して、活動について簡単な英語での説明を添えました。これからの授業の中で、コロナに負けず、少しでもALTと充実した活動のために、参考にしていただければ幸いです。

●感染予防に配慮した活動 基本方針

【距離】

近距離での活動(児童の密集、接触など)、長時間にわたり対面形式となるグループ活動などを避ける。

  1. ペアでの活動を実施する際には、お互いに十分な距離を取る。(最低1m程度)
  2. グループ活動を実施する際には、机の配置に留意し、児童が近距離で対面することを避ける。
  3. 児童どうしの接触を必要とする活動については、実施方法を検討する。

【声】

十分な距離が保てない場合には、飛沫を避けるため声を発する方角や音量に注意する。

  1. 距離が取れない場合、ペアやグループでの活動は児童全員が一斉に前を向いて全体で実施できる活動に置き換える工夫をする。
  2. チャンツなどの一斉練習では、同時に発話する人数を極力減らす。
  3. 歌は大きな声で歌うよりも、リスニング素材として活用する。
  4. グループ活動を実施する際には、複数で一斉に話す状況を避ける。

●「基本方針」に基づいたティームティーチング(TT)の工夫

  1. 全体活動において担任・専科の先生またはALTが活動をリードする場面では、他方の指導者は机間指導を行い、発話する児童の状況を管理する。
  2. ペア、グループ活動の実演の際、活動中の距離の取り方や飛沫を避けるための位置関係などを視覚的に示す(手を伸ばして触れないように、横並びで話すなど)。
  3. 担任・専科の先生とALTで分担し、活動単位を少人数化する(グループを前後で分けるなど)。

「基本方針」に基づいたティームティーチング活動案

1.全体活動

Birthday “Dance” Party ―『Here We Go!』 5 Unit 2 p.33 “Let’s try.”のアレンジ

英語を聞いて、動作で反応するTPR(Total Physical Response)にコミュニケーションを取り入れた活動です。

★言語材料: 月の名前、日付(数)
★領域: 聞くこと・話すこと(やり取り)
★準備する物: デジタル教材または絵カード(月、数、日付)、誕生月ワークシート
※『Here We Go!』5 Unit 2 Jump! 用のワークシートを活用可能

◎通常の活動イメージ

児童どうしがランダムにやり取りをしながら、誕生日順に列を作ります。

◎感染対策を考慮した活動イメージ

ジェスチャーを取り入れたその場での活動にすることで、接触や飛沫を最小限にすることができます。

①各月にジェスチャーかダンスを割り当てる。(例: 2月は豆まきのしぐさなど)
担任・専科の先生とALTはともに前に立つ。一方が月を順番に紹介しながら児童からどんなジェスチャーにしたいかを引き出し(例: What do you do in 月の名前? Gesture please!) 、他方の指導者は同じ月の児童と一緒にジェスチャーを反復する。

②日付を順番に示しながら児童が自分の誕生日の日付を言えるように促す。

③担任・専科の先生とALTは児童全員から見える位置に机を並べて着席し、活動の実演をする。一方が“When is your birthday?” と質問し、他方は立ち上がって自分の誕生月のジェスチャーをしながら日付を言う。見ている児童には誕生日のメモをとるように伝える。質問側と回答側を交代して再度実演し、友達全員の誕生日をメモするよう伝える。

※TTの工夫 (2)に該当

④机を動かさずにお互いの動作が見える単位のグループに分ける。1つのペアが話している内容をほかの児童は聞き取り、メモをする。担任・専科の先生とALTで学級の前方・後方など分担して活動の状況を観察し補助する。

⑤活動が終わったら、誕生日の早い順に各グループでジェスチャーと日付を言ってもらい、答え合わせをする。

<For ALT>

“Birthday dance party” is an alternative activity of “Birthday chain” in the textbook, and fun way to get students moving through TPR, and reinforce dates for both speaking and listening without too much interaction.

Target Language: Months, Dates, Numbers

①Teachers and students practice the name of months of the year and assign a gesture or dance move for each of them.

②Teachers and students practice dates as well.

③Teachers demonstrate the activity. One asks “When is your birthday?” and the other stands up and answers by doing the gesture for the month and saying the date. Teachers ask students to listen to their friends’ birthday and take notes.

④Make groups without moving desks. Teachers are standing opposite sides in the classroom to take care of each group of students (See the example layout).

⑤Students in pair then take turns standing up and asking and answering according to the demonstration, while the other students make a memo of their classmates’ birthdays based on the gestured month, and the spoken date.

Finally, the students check their classmate’s birthdays and saying their birthday month and date in order to confirm. Teachers are going around in a group to show which student’s birthday should be called out.

2.ペア・グループ活動

〇×クイズ ―Maru-Batsu Quiz (True or False)

ペアやグループでの発表の仕方に慣れ親しむ活動です。

★言語材料: さまざまな話題で実施可能

I like ~. / I don’t like ~. 『Here We Go!』5 Unit 1 p.25 “Let’s try.”

I can ~. / I can’t ~.   『Here We Go!』5 Unit 5 p.67 “Let’s try.”

I went to ~. / I ate ~.  『Here We Go!』6 Unit 4 p.53 “Let’s play.”

I want to be ~.       『Here We Go!』6 Unit 8 p.99 “Let’s try.”

★領域: 聞くこと・話すこと(やり取り)(発表)
★準備する物: 事前もしくは活動のはじめに児童にクイズを作成させておく

◎通常の活動イメージ

1)ペア

児童どうしがランダムにやり取りをしながら、自分の考えたクイズを出し合います。3つの文を言いますが、2つは本当で1つは本当でないこととします。聞き手は相手の話が本当か本当でないかを推測します。

2)グループ

グループで向かい合い、1名ずつ順番にクイズを出題し、聞き手は答えを推測します。

◎感染対策を考慮した活動イメージ

1)ペア

話す相手を限定することで、ペアの位置関係を明確にし、不特定的な接触や飛沫を最小限にすることができます。

①担任・専科の先生とALTはともに前に立つ。一方が言語材料を使ってクイズを出し、他方は児童と一緒に本当か本当でないかを推測する。合っているものには〇、違っているものには×のジェスチャーをする。

②隣の人と話し終わったら席を立たずに、前後の人と話すということを伝える。

※TTの工夫 (2)に該当

③活動中は児童のやり取りの様子を観察し、発話を補助したり適切な位置関係かどうかを確認したりする。パートナーを変えるタイミングでは一方の先生が前に立ち助言を与えると同時に、他方の先生は机間指導をして位置取りや発話の方向などを調整する。

※TTの工夫(1) (3)に該当
※TTの工夫(1) (3)に該当
2)グループ

児童の向く方向を調整しジェスチャーを取り入れることで、不特定的な接触や飛沫を最小限にすることができます。

①担任・専科の先生とALTは実演をする。それぞれ1つのグループのところに立ち、児童に自分の方を向くように指示する。クイズを出題し、児童に〇または×のジェスチャーで推測するよう促す。

②発表者は常に★マークの位置に立ち、聞き手は一定の方向を向いてジェスチャーでクイズに答える。

※TTの工夫 (3)に該当

<For ALT>

Maru-Batsu Quiz (True or False) is a presentation practice and students can be familiar with presentation style in fun atmosphere.

Target Language: Can/Can’t, Likes/Dislikes, etc.

①Teachers demonstrate the activity. One introduces himself/herself, with three statements. Two of the statements are true (maru), and one is false (batsu). The other guesses which is true/false with students and answers using hand gestures for maru/batsu.

②After the demonstration, students do this activity in pairs or groups (See the example layout).

※Pairs: Students remain seating and communicate with students in their left/right or front/back.

※Groups: Students take turns until everyone has spoken.

★signs are where students stand to present, the desks turned to face that direction.

*  *  *  *  *  *

●最後に

これまで行ってきた活動も、指導者の動き、児童の発言の仕方や答え方、立つ位置などを工夫することで、感染症に配慮して扱えるものもあると思います。ALTとのTTでは、活動前の実演でソーシャルディスタンスを意識した立ち位置や活動の注意点などを見せること、また机間指導の工夫などにより、やり取りの活動を安全に実施しやすくなります。コロナ禍においても英語を使ったコミュニケーションの楽しさを損なわないよう、このような情報発信を通して、子どもたちの教室での学びを止めないためのお手伝いができれば幸いです。


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