感染予防に配慮したコミュニケーション活動の提案 【第3回】 「伝え合う」「たずね合う」活動を、 ICT活用でより手軽に確実に!

020年8月5日公開

東京成徳大学助教  土屋佳雅里

夏休みですね。コロナ禍で、例年にない短さの夏休みとなる学校が多いようですが、たとえ過去最短であっても、子どもは(大人も)お休みが嬉しいものです。終業式が近づくにつれ、マスクの上からのぞかせる目の笑う率が高くなっている気がします。マスクの下に隠れる口元も緩んでいるのが目に見えるようで、こちらも思わず笑顔になります。

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さて、感染予防に配慮するコミュニケーション活動の工夫として、前回は実物の名刺カードのやり取りを想定しましたが、今回はICTを用いるやり取りの活動例を紹介します。

感染予防の視点から、学校現場におけるICT環境の整備・活用の重要性が急激に高まっています。学校教育でのICTを活用した学習の概要、教室内での具体的なICT活用については、次の資料が参考になります。資料では、ICTを活用する学習の場面が10項目で想定されています。指導の実態に合わせて具現化するには、例えば、感染予防の配慮が必要な活動が出てきた場合、その活動を10項目に当てはめながら検討すると、活動の工夫やアレンジの具体的なイメージが浮かんでくると思います。

それでは、具体的な活動を例に挙げ、ICT活用の場面を紹介します。

※以下の例は、上の10項目に当てはめると、「C 協働学習」における「C1 発表や話合い」「C2 協働での意見整理」「C3 協働制作」「C4 学校の壁を越えた学習」の4項目での活動の工夫になります。

ICTを使って、「~し合う」活動(「たずね合う」「伝え合う」など)を工夫する。

『Here We Go!』には、「たずね合う」「伝え合う」など、「~し合う」という英語でのやり取りを想定した活動がUnitごとに設定されています。5年では「誕生日にほしいプレゼントをたずね合おう」(Unit 2)、「行きたい国とその理由をたずね合おう」(Unit 6)など、6年では「夏休みのできごとをたずね合おう」(Unit 4)、「町にあるものとないものを伝え合おう」(Unit 6)などです。「~し合う」活動は、他にも、「自己紹介をし合う」(5年)などがあります。 

これらの活動は、英語を「話すこと[やり取り]」を目標とすることが想定されるため、声が届く範囲の近距離でのやり取りが期待されるところです。しかし、発声が制限される環境を考慮し、目標(評価規準)を「話すこと[やり取り]」から「読むこと」「書くこと」にアレンジし、手段を口頭に限らず、文字を通してのコミュニケーションを行うこととします。

そこで、文字を介するコミュニケーションの手段として、付箋を利用します。いわゆる、「筆談」です。付箋を使えば、口頭でのやり取りなしで、コミュニケーションを取りたい相手との距離を保ちつつ、ペタッと貼れる場所ならどこででも、互いに、自分の思いを手軽に伝え合うことができますね。学校に必ずといっていいほど常備されている付箋を使えば、思い立ったときにいつでも実践できそうです。さらに、ICTを使って、紙の付箋を「バーチャル付箋」に変身させれば、もっと手軽に、かつ確実に感染予防ができ、また、経費も時間も節約することができます。

ここでアプリケーション「Padlet(パッドレット)」を利用する一例を紹介します。Padletは、情報を共有できるアプリケーションです。イメージとしては、掲示版に付箋をぺたぺた貼っていくような様子を思い浮かべていただければいいと思います。

ICT活用には、デバイス(PC、タブレットなど)のほか、目的によってはソフト・アプリなどが必要となるため、まずは費用面がICT活用に立ちはだかる高い壁となります。そこで、無料で使えるアプリが活躍します。Padletは、有料プランと無料プランがあり、無料の場合、作成できる掲示版の数に制限はありますが、活用する価値は十分あると思います。作成者(先生)はユーザー登録をすれば誰でも、掲示する参加者(児童)はユーザー登録をせずに匿名で、Padletを無料で利用することができます。

では、Unit 6 This is my town. の伝え合う活動を例に挙げて、Padlet(無料プラン)の使用例をみていきましょう。

『Here We Go! 2』(6年)  Unit 6 This is my town. 

【Step1】 町にあるものとないものを伝え合おう。 
Let’s try.  自分たちの町にあるものとないものを探して、友達と伝え合いましょう。

※自分たちの町の理解を深めるため、自分たちの町について We have / don’t have.... の表現を用いて、あるものやないものを伝え合います。

◆Padletの使い方の手順と使用例

※Padletの言語について
元の表示は英語ですが、日本語に自動翻訳されて表示されます。よって、言葉が少しユニークに翻訳されることがあります。
(1)ユーザー登録

Padletのトップ画面から、ユーザー登録をします。

Padletのトップ画面はこちら

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(2)「+パッドレット」をクリック

ユーザー登録をすると、登録した名前とメッセージが表示されます。
いちばん左端の「+パッドレット」をクリックします。

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(3)フォーマットを選ぶ

作成画面のフォーマットを選びます。作成画面が「掲示版」に想定されます(以降、「掲示版」と呼びます)。さまざまなパターンがありますので、活動に応じて、使い分けるといいですね。今回は、児童の意見を書いた付箋を壁にペタペタ貼っていくイメージなので、「シェルフ(次々にコンテンツを入れる)」を選びます。

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(4)「壁紙」を選ぶ

掲示版の暫定的なタイトルと説明が左上に表示されます。以下の画面のようにユニークな言葉が使われるので、面白いです。タイトル、説明や仕様は右端に現れる「修正」で変更できます。「壁紙」も単色画面から図のような宇宙や世界地図などバージョンがいろいろあるので、活動や児童の好みに応じて変えるといいですね。楽しく選べます。今回は教室をイメージして、黒板を選びます。

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(5)テーマを提示

掲示版ができあがりました。左端に「コラム」が登場するので、意見を書き込むテーマを提示します。今回はまず“We have …”を書きました。コラムは追加できますので、次は“We don’t have…”のようにテーマを増やしていけばいいですね。

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(6)掲示板を共有する

児童はURLのリンクにジャンプしたり、QRコードを読み取ったりするなどの方法で、掲示版にアクセスします。右上にある「シェア」をクリックするとウィンドウが開き、リンクのコピーやQRコードを表示することができます。

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(7)意見を投稿する

コラムの下にある「+」をクリックして、意見を「投稿」します。この投稿が、いわゆる「バーチャル付箋」のイメージになります。投稿はコラムの下に、次々にチェーンのようにつなげられます。下に長く連なると見づらいので、例えば学習班ごとにコラムを作成するなど、表示のしかたを工夫するといいですね。

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  • 作成者が投稿すると作成者名が表示されますが、児童が投稿すると「匿名」になるので、意見を書いた最後に(Sato Yui)など名前を明記すると誰が書いたものかがわかります。文字だけでなく、写真や図・イラストなども投稿できますので、児童の得意なものや好みに応じて投稿するようにすれば、児童の意欲を引き出し、より楽しい活動となることでしょう。 

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  • 文字入力はアルファベットを認識する練習にもなります。教科書71~72ページや、巻末の絵辞典125ページなどで、施設名の英語を確認しながらアルファベットを入力するといいでしょう。投稿の下方にはリアクション(今回は「いいね!♡」を選択)を入れたり、「コメント」を書き込んだりすることができます。児童の意見に、他の児童がコメントを伝えられるようにすれば、これも児童どうしや、児童と先生の間でのいいコミュニケーションの場ともなりますね。

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こうしてできあがった掲示版は、画像やPDF、Excelなどに保存(エクスポート)できるので、学習記録として残します。学習記録は評価の参考になりますし、また、保存した画面などは、教室内に掲示したり、授業内で提示したりして全員で確認することもできるので、活動の振り返りや成果として有効に使えますね。学習記録は目的に応じて、さまざまに活用できそうです。

今回は、ICTを活用して工夫する、やり取りの活動の代替案として、無料の情報共有アプリ「Padlet」を用いる一例を紹介しました。活動を実施するためには、相応のICTデバイスの準備が必要になりますが、ICTツールでPadletのようなアプリを利用することにより、教室でのICT活用の場がより広がることと思います。また、Padletは教室外でも使用できるので、今後もし休校のような事態になったとしても、遠隔でのさまざまな学習が可能になります。先が読めない世の中ですから、普段からICTの使用に慣れておき、不測の事態に備えて準備をしておくこと、心構えを持つことはますます大切になることでしょう。


Illustration: Kagari Tsuchiya

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