おうちで使おう! 『Here We Go!』

2020年6月10日公開

岐阜聖徳学園大学准教授  加藤拓由

緊急事態宣言が解除され、学校生活が始まりました。現場での感染症対策等、例年にない緊張感を伴った新学期、現場の皆さんのご苦労がしのばれます。また、今年度から「教科」となった英語もスタートしました。小学校英語教科書『Here We Go!』をご使用になっての感想はいかがですか? 豊富な言語活動や豊かな多文化理解、また、ことばの学習を通した人権教育など、教科学習だけでなく学級経営にも役立つ一冊になっています。この、すてきな教科書『Here We Go!』を「おうちで使う」際のポイントをご紹介します。


『Here We Go!』には、QRコードがついています。家庭学習の課題などで、このQRコードを使った「音聴(おんちょう)」をさせてみてください。国語の授業ではよく「音読」の宿題が出されます。英語では、まだ児童が一人で読むことは難しいかもしれませんが、聞かせることはできます。

聞かせる際には、Goalに書かれている「学習目標」を意識して、聞き取りのポイントを示すことが大切です。例えば、5年生のUnit 2 Hop!の学習目標には、「誕生日や身の回りのものの言い方を知ろう」と書かれています。

画像、教科書紙面

『Here We Go!』5年 Unit 2

児童に家庭学習の指示を出すときには、「QRコードの Storyを3回聞いて、登場人物が言った文房具に○をつけてきましょう。」のように、聞き取りのポイントを絞った、具体的な課題を出すようにしましょう。以下に、家庭で「音聴」を進める上での保護者向け・児童向けの注意点を書いておきます。学級通信などでご活用ください。

【小学生のみなさんへ】

人間の赤ちゃんは、生まれたときはどんな国の言葉でも覚えることができる能力を持っています。その後、成長して、周りの大人が話す言葉のリズムや発音の特徴を聞いているうちに、それぞれの国の言葉を覚えていくそうです。

みなさんが、英語を勉強するときにも、最初はできるだけたくさん英語の音を聞いて、英語独特のリズムや音に慣れることが大切です。まずは、英語を「聞くこと」を大切にして英語の勉強をすすめていきましょう。

【保護者の方へ】

2020年度から小学校で英語が教科として開始されました。小学校の英語は、これまでの英語教育から、さらに一歩進んだ考え方で行われています。それは、実際に言語が使われる目的や場面が大切にされること。そして、単語や英文の力を付けるのではなく、一定量の英語を聞いてざっくりと概要を捉える力を伸ばそうとしていることです。

例えば、5年生のUnit 2 の Story では、大人が聞いても、すべては聞き取れないほどの英語が2分半ほど聞こえてきます。これを、お子さんが聞いているときに「ほら、英語でなんて言ってたか、まねしてごらん。」とか、「今の英語の意味って、何かわかる?」と聞かないでください。

まるで、音楽を楽しむかのように、全体を通して繰り返し聞いて、話されている概要を聞き取れるようにすることが大切なのです。このようにあいまいな部分を聞き飛ばし、ポイントを聞き取ることで、子どもの英語を聞く力が育つのです。

児童がおうちで聞いて、○をつけてきたところを、学校の授業で確認しましょう。おそらく、それぞれ違うところに○が付いていると思います。そこで先生が、“OK, let’s listen again!”と言って、もう一度動画を視聴させて確認します。「そうか、basketballじゃなくて、消しゴムeraserのことを話していたんだ。」と子どもたち自身が学習を振り返り、主体的に学習に取り組む態度(自己調整・メタ認知)の力をつけることができます。

このように、小学校のうちに、英語の音をていねいに聞く力を育むことで、中学校以降の英語の学習で、難しい内容でも自信をもって英語を聞いたり、読んだりすることができる力を付けることができるのです。感染症対策などで、英語の授業でできることが限られている地域もありますが、そんな時だからこそ、改めてコミュニケーションの原点である「繰り返し、丁寧に聞くこと」を行い、Good Listenerたちを育てるよいチャンスなのかもしれません。

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